季節は巡って、冬と呼ばれる季節になろうとしていた。
 空気も凍りそうな冬の空からは今にも白い雪が落ちてきそうだ。
 こぽこぽと音を立てて湯飲みにお茶が注がれる。
 お茶を注いでいるのは名雪。
 お茶請けを用意してきたのはあゆ。
 ふと、暖かいお茶でも飲みたいなーと言ったのが始まりだった。
「はい、みんなの分入ったよ〜」
「さんきゅ、名雪」
「ありがとう、名雪さん」
「どういたしまして。あゆちゃんこそお菓子持ってきてくれてありがとう」
 お茶請けは羊羹だ。
 半分ほど残った羊羹を見つけたあゆは包丁で丁寧に人数分に切り分けて持ってきてくれた。
 渋いお茶に羊羹…嗚呼、日本人って素晴らしい。
「では、いただくとしますか」
「うんっ」
「いただきまーす」
 三人それぞれがお茶をすすり、羊羹を食べる。
 やっぱり冬はこうでなくちゃな。
 寒いのにわざわざ外に出るなんて考えたくない。
 ふと、窓の外に目を向ける。
「うわ…雪…」
 いかにも降りそうな空だったから覚悟はしていたのだが、いざ降るとどうにも寒気を感じてしまう。
 こりゃ下手な格好でいたら絶対風邪ひくぞ。


 そういや…
 随分と懐かしい事を思い出してしまった。
 雪を見たせいだろうか、何気ない事なのに頭を過ぎってしまった。
「そういえば、あの冬あゆって夜にベランダ登ってまで俺のとこに何しに来たんだ?」
「……え?」
 そうなのだ。
 思い出したことはこんな何気ない事。
 …のはずなのだが。
 その記憶と一緒に少し前に思い出した事件の記憶が重なる。
 疑惑は確信に、そしてそれは悪戯心を呼び起こす。
「夜這い……だよな」
「そ、そんなことは……」
「なんてな。いやいや、あゆ君。私は先日、思い出してしまったんだよ。8年前の出来事を」
 目に見えて狼狽するあゆ。
 この様子だとあゆは覚えているようだ。
 ふふふ、そのイケないことをしているところを見られた生娘のような顔がまた悪戯心を刺激するなぁ。
「な、何を思い出したのかな?」
「あくまでシラを切るか。このエロエロ娘め。いやー、おかしいと思ってたんだよなあ。再会したあゆって七年前より言動が幼くなってるような気がして」
「ゆ、祐一君っ! あのことは……」
 俺の服の裾をぎゅっと掴んだあゆは、必死に首をふってやめてやめてと懇願する。
 まあ、あれだ。取り繕う言動も、毎日になればそれが素になってしまうということか。
 あゆは18歳なのに、袖にぶら下がるその仕草は、どう見ても10才に満たない少女のものだった。
「子供っぽいフリをしてれば、あれがあゆだったなんて思い出さないだろうって読みは悪くない。ま、諦めろ。もうすっかり思い出した」
「う、う、う、うぐぅ……」
 あゆの顔が見る見るうちに真っ赤に染まっていく。
 よっぽど思い出して欲しくなかったのだろう。
 気持ちは分からないでもない。でも、俺は……本当は嬉しかった。
 その思い出も、こうして目の前で恥ずかしがってくれるあゆがいるからこそ。
 あの日の延長に今があることが、とても嬉しかったんだ。


 8年前の事件…
 つい先日まで忘れていた事件の記憶が開かれていく…
 それは、まだあの森に大木が残っているときの話。
 あゆが木から落ちる前日の…幸せだったときの話。
 そして……。
 これからは嬉し恥ずかしのメモリーとして、俺達の胸に刻まれていくであろう話だ。







はじめてのたいけん


作者:エルラ & ace
原作:Key & OLSON









「やっぱりここからの風景は格別だよっ」
 いつものように木に登り、街の風景を眺めるあゆ。
 高所恐怖症の俺には分からない風景。
 …やっぱり何度付き合っても慣れないなぁ。
 ぶるるっと体を震わせる。
 あゆが高いところにいる恐怖とこの寒さ、そして…
「そろそろ…限界か」
 あゆに悪いと思って我慢してきたけど、そろそろ限界っぽい。
 ちょっと情けないけど、仕方がないか。
「あゆー! ちょっと離れるけどいいかー?」
「え? どうしたの?」
「ち、ちょっとした用だ。すぐ終わるから待っててくれー!」
 首をかしげるあゆ。
 まぁ、断りを入れたし大丈夫だよな。
 背中を丸めて、逃げるように茂みへと駆け込む。
 こういうとき、男って便利だなと感じてしまうのが情けなかった。


 大木から十分に離れて周りを見回す。
 誰も…いないな。
 ホッと一安心…じゃなくて、急いでズボンとパンツを下ろす。
 中から出てきたのは…うん、アレだ、アレ。
 左手で掴んで、水平ぐらいの角度で固定する。
 これが俺のベストポジションなのだ。
 腹に力を入れる。
 ちょろっと勢いよく出てから、続いて一気に出始める。

 じょろろろろ…

 はぁ〜っ、気持ちいいなぁ…
 しかしまぁ、間に合ってよかった。
 漏らしたりなんてしたら一生モノの恥だ、うん。
 それも少なからず好意を持ってる女の子の前で漏らすなんて…想像しただけで死にたくなる。

 じょろろろろ…

 随分と長く出る。
 結構溜まってたからなぁ…


 うわ…と小さい声が出る。
 …はて、俺はそんな声を出したか?
 なんだか女の子のような声だった気もするが…
 ………?
 気になって辺りを見回す。
 まさか…いないよな…?

「………」

 …いました。
 それもバッチリ見える位置で。
「…こういう場合『きゃ〜! えっち〜!』と叫んだ方がいいか?」
「!?」
 びくっ、と体を震わせ、慌てた様子で顔を上げたあゆと目が合う。
 慌てたいのはこっちだよ…
 とはいえ、随分と冷静なもんだ。
 …まぁ、一度せがまれてじっくりと見られたこともあるしなぁ。
 そのときは見られるだけじゃなくてえらい目に遭ったのだが。

 じょろろろろろ…

 しかし、まぁ。
 見事に止まらない。
「…いつから見てた?」
「えっと、その…ズボンを下ろすところから」
 全部じゃん。
 うぅ…よりにもよってこんな格好を見られるなんてなぁ…
 あ、なんか泣けてきた。

「………」

 あゆはすっかりアレに夢中だ。
 そんなにじっくりと見られると恥ずかしいんだけどなぁ…
 男同士では見られても平気だったりするんだが、女の子に見られるのは話が別だ。
 しかも、こうしてじっくりと見られるなんて…
 いや、もちろん男に見せる趣味も無いぞ。断じて。


 やがて、出すものも尽きた。
 よかった、これで恥ずかしい思いともおさらばだ。
 2、3回振って残ったものを落としてズボンを上げようとする。
「……えっ!?」
 あゆは信じられないといわんばかりの目で見つめてくる。
 視線が気になってズボンを上げられない。
「…どうしたんだ?」
「えっ! えっと…その…」
 あゆの顔が真っ赤になってる。
 俺もきっと顔真っ赤なんだろうなぁ…
「えっと…その…拭かないの?」
「はぁ?」
「だって、その…し、した後って拭かなきゃいけないし…」
 一瞬、何を言っているのか分からなかった。
 数秒かかってようやく理解できた。
 あぁ、なるほど…で、だ。
 どう説明しろ…と。
「………」
 ものすごーく教えて欲しいって目をしている。
 うぅ…恥ずかしいけど、これもあゆのためだ…
 しかし、うまい説明が思いつかない。
 うーむ…
「お、男は拭かなくてもさっきみたいに振ればいいんだっ」
 結局出てきた答えは答えになってないようなものだった。
「そうなんだ…便利だね…」
 アレをじっと見つめながら、あゆは感心しているようだ。。
 答えになった……のだろうか?
 相変わらずあゆの視線はアレから離れない。
「ね、ねぇ…」
「ど、どうしたんだ…?」
 次は何が飛び出してくるものやら…
「えと、その…」
 伏し目がちに、あゆは次の言葉をためらっている。
 な、何を期待してるんだよ俺。
 だけど、この展開は……。
「そ、その…さわっても…いい?」


…………。
……。


 予感的中。
 あゆの手が、あの細くてやわらかそうな手が俺のこれを触る。触ってくれる。
 なんだかよく分からないけど、その感触を想像しただけで胸が激しく脈打った。
 って、まてまて落ち着け俺。また弄ばれて酷い目に遭いたいのか?
 これは男の誇りなんだ。シンボルなんだ。
 女にオモチャにされていいものじゃないんだ。
「……ダメ?」
 でも……
 真剣にそれを見つめるあゆを見ていると、ダメと言えなくなる…。
「…いいぞ」
「えっ……いい…の?」
「あ、あゆだから特別になっ」
 実のところ名雪にも文字通り根掘り葉掘り触られたんだけど、それは置いておこう。
「そ、それじゃあ……さわるね」
 あゆの細くて小さな指がアレにそっと触れた。
「っ!?」
 な、なんだこれ…名雪のときとなんか違う…
 な、なんかドキドキする…
 あゆの指が袋や棒をやさしく触っている。
 その動きや、あゆに触られているって事がなんかドキドキする…
 なんだこれ…なんで名雪のときとは違うんだ…?
 頭が少しずつボーっとしてくる。
 アレが確かな熱を帯び、まるでそこにもう一つ心臓が出来たかのような鼓動を感じた。
 あゆの手はさっきよりも大胆に、アレに力を込めていく。
「うくっ…」
 なんだ…なんだよこれ…
 ボーっとした頭であゆを見つめる。
 すると、少しずつあゆの顔がアレに近づいてきていた。
 っておいおいおい! これってあの時と…




「あれ? 何か赤いのがある」
 そう言って先端の皮を両手で摘み、引っ張って広げた。
「あーっ! さっきのイチゴそんな所に隠してるー!」
「イチゴ?」
「返してよっ!」
 名雪は摘んだ皮に力を込めた。
「ひぎっ!?」




 ちょっと待てー!! これじゃあ、あの時と同じじゃないかっ!!
 すぐにでもあゆを引き離したいが、しっかりと握られているこの状態では難しい。
 どうするっ! どうするっ?
「あ、あゆっ…そ、そろそろ…」
「え? そろそろ?」
 すっかり無我夢中になっていたあゆが顔を上げる。
「え、えーと…寒いからしまっていいか?」
 とっさに考えた理由。
 まぁ、実際寒いんだけど。
 これならあゆも諦めてくれるだろう。
「そ、そうだねっ、祐一君だけ脱いでるなんて不公平だよねっ」
 …おや?
 あゆにはうまく伝わっていないようだ。
 うーむ…仕方がない、もう一度言うしか…
「だ、だからボクも脱ぐよっ! これで一緒だよねっ」
 そういい、あゆが一気にパンツを下ろす。
 …あ、あの……あゆさん?
「祐一君のばかり触ってるなんて不公平だよ。だから、ボクのも触って…いいよ」
 顔を少し赤らめながら、あゆがそおっとスカートをたくし上げる。
 パンツを下ろし、外気に触れるままになったそこは一筋のすじがあるだけだった。
 名雪のと変わらない、どうなってるのかよく分からない場所。
 気にならない…と言えば嘘になる。
 あゆのを……見てみたい…
 …仕方がない、男は度胸。
「そ、それじゃあもうちょっと触っててもいいぞ!」
 あゆの顔がぱあっと明るくなる。
 こっちは声が裏返ってしまって、恥ずかしい。
 それはともかく、あれだけはちゃんと言っておかないと。
「あ、ただし条件がある」
「ボクのを触らせて欲しいって事?」
「い、いや…そうじゃなくてだな……決して咥えたりかじったりしないで欲しいんだ」
「そ、そんなことできないよ! おしっこが出るところなんて…き、汚いよっ」
「触るのは汚くないのか?」
「だ、だって、祐一君が手でさわってたから、手なら汚くないと思って……。それとも、祐一君はこれ口の中に入れるの?」
 あゆ、所持者としてはなんかかわいそうだから『これ』を鉛筆みたいにつまんで引っ張ってみせるのは止めてくれ。
 そんなことしなくても、何のことか分かるから。
「いや、もちろん俺は口に入れたこともなければ、誰かのものを咥えたこともないぞ。あゆと同じ理由で」
「だったら、なんでそんなこと訊いたの……?」
「まあ……その……念のためだ」
 呆れるあゆに、あさっての方向を見ながら言葉を濁しておく。
 実は咥えてかじろうとした女の子がいたなんてとても言えない。
 あゆの反応こそが常識人(?)のものなのだろう。


「それじゃあ…い、いいぞ」
「うん、ありがとう…」
 再びあゆがアレに触る。
 さっきよりも顔が近い。
 口から吐き出される息を感じるぐらいの距離…
 感嘆とともに、熱い吐息が先端をなでてゆく。
 それが例えようがないくらいにこそばゆい。
 そこにキスをされたら、こんな感じなのだろうか?
 ここまで見られておいてなんだが、これって凄く恥ずかしいなぁ…
「…あれ?」
 あゆが何かに気がついたように首をかしげる。
 引っ張ったり横から見たりして、なにやらじっくりと観察するように見入っている。
 もしかして俺のって他の人と何か違ってたりしてるのか…?
「あれ? これって、本で見た……」
 本? 何のことだ?
「じゃあ、ここから精子が出るの…?」
 せいし? なんだそれ?
 あゆはアレから手を離して考え込んでしまった。
 なんかすごく不安になるんだが…


「祐一君っ!!」
「うわっ!?」
 いきなり大声を出されてびっくりした。
 嬉しそうに胸の前で手を合わせて、何故か分からないけど目にお星様まで浮かべてる。
 いったいぜんたい何がなんだかさっぱりだ。
「祐一君、男の人と女の人が赤ちゃんを作ったらどうするか知ってる?」
「そりゃあ決まってるだろ。責任を取って一緒に暮らすんだろ?」
 ドラマとかでよくやってるよな。
 というか、隣の家のオバサンがこっちに来る前そんなことで騒いでた気がする。
「うん、そうだね。それじゃあ…」
 興奮で赤くなっていた頬を更に赤く染め、あゆが真っ直ぐに俺を見つめる。
「ボク…赤ちゃんが欲しい。そして、祐一君と一緒に暮らしたい…」
 その赤が気恥ずかしさの赤だと分かると、ドクンと心臓が大きく鳴った。
 そのままドキドキが止まらなくなる。
「一緒に…暮らす…?」
「うんっ! 赤ちゃんが出来た二人は一緒に暮らして赤ちゃんを育てなきゃいけないんだよ」
「そ、それじゃあ…俺は帰らなくてもよくなる…いや、帰っちゃいけなくなるんだ」
「うん! うん! ずっと、ずーっと一緒にいられるんだよっ!」
 そうか…そんな方法があったのか…!
 あゆと一緒にいられる。
 お別れなんてない、ずっと一緒に…
「よし、じゃあ赤ちゃんを作ろう!」
「うんっ」
 俺にもできる事があったんだ。
 あゆと別れないでいる方法があったんだ…!!


 …で、だ。
「どうやったらいいんだ? 俺、まったくわからないんだけど」
 我ながら情けない。
 学校の授業でやってなかったし、赤ちゃんの作り方が書いてある本も読んだ事がない。
 それを見たらしいあゆの知識だけが頼りだ。
「うーん……赤ちゃんを作るには、男の人の精子と女の人の卵子が必要なの」
「それでね、祐一君のここから精子が出るはずだから……」
「……精子ってどんなんだ?」
「黒いおたまじゃくし、みたいなのかな」
 どうやら、俺のこれからは黒いおたまじゃくしが出てくるらしい。
 そんな隠れた機能があるなんて知らなかった。
 トイレでうっかりおたまじゃくしを出してしまった様子を想像してみる。
 便器に溜まった水の中を所狭しと泳ぎ回るおたまじゃくし。
 流すに流せず、しばらくうちのトイレは使用できなくなってしまうのだった。
 ……かなり嫌だぞ、それ。
 どうやって出すかを知って、うっかりトイレで精子を出してしまわないように対策を立てないと。
「で、どうやったらこいつから精子が出るんだ?」
「うーん、それは祐一君が考えてよ。ボクにはそれ生えてないから分からないよ」
 ヒミツのボタンでも押したら変形しておたまじゃくしを出せるのだろうか?
 ためしに袋の後ろを探してみたけれど、そんなものはなかった。
 というか、あやうく尻の穴を触るところだった。汚い。
「うーん、ひょっとしたら、男一人じゃ出せないのかもしれないぞ」
「んー、赤ちゃんって女の人のおなかに出来るんだよね。卵子はお腹の中で精子と会うんだけど」
「つまり?」
「精子をお腹の中に入れるには……ここに、祐一君のそれ入れるんじゃないかな?」
 先端をあゆの指に弾かれたソレが、自己主張するかのようにぷるんと震えた。
「なんとなく、そんなために出来てると思わない? 祐一君のそれとボクのこれ」
 今度は両足の間にあるたてに入ったすじを広げて、そこにあるおしっこの穴を指差す。

 しかし、なんだかな……いや、なんなんだろう。
 よく見てると、名雪のそこもあゆのそこもなだらかな凹凸があって平坦なわけじゃない。
 いかにも『ある』って主張してる男のそれより、控えめって言うかおしとやかっていうか……女の子らしくてかわいいよなあ。
 って、何考えてるんだ俺は。

 とにかく、あゆが広げてみせたそこには、指でも入りそうな大きな穴があった。
 可愛らしいスリットの外見と裏腹に、その中身の穴はちょっとグロテスクな気もするが、俺のものも一皮めくるとなんだか気持ち悪いのでお互い様だと思っておこう。
 見た目が悪いから、そういうところは見えないようになってるんだ。
 そして、あゆの言うとおり、あゆのおしっこの穴には、俺のものがちょうどハマりそうに見えた。
 中身を隠したり、ハメられるように作ってたり、本当によく出来ている。
 なんだか神様がいることを信じてみたくなったかもしれない。
「おしっこの穴に入れるのか。女って大変だな」
「えっ? 何で?」
「だって、赤ちゃんがおしっこの穴通って出てくるんだろ? こんな小さなところ、赤ちゃんが通ったらもの凄く痛いぞ」
 痛いどころか、男のシンボルは破裂して二目と見られない姿になってしまうだろう。
 女にこれがないのはそれでなのだ。
 本当に、神様はうまく人間を作ったなあと感心する。
「きっと、祐一君がそれをここに入れたら精子を出せるんだと思うよ」
「なるほど。名探偵になれるぞあゆ」
「えへへ、そうかな……」
 よし、これで子どもを作れば……俺とあゆは…
「そ、それじゃあ……あゆ。行くぞ」
「う、うんっ」


 緊張が解けない。
 なんせ初めての事で、本当にこのやり方で合ってるかも分からない。
 ……ええい! なるようになれだ!
 アレをあゆのすじに押し当てる。
 そのまま一気にっ!!

 ふにっ

 ……おやぁ?
 入らない。
 伝わってくるのは、俺の腹と、あゆの股間にあるすじで俺のものがペチャンコにされている感覚。
 もう一度だ!

 ふにっ

 またしても失敗。
 よく見るとアレは見事にふにゃふにゃで、力を入れて押し込むなんてできそうにない。
「……無理だあゆ。入らないぞ」
「えっ?」
「こんなふにゃふにゃなのを入れるなんて無理だ」
 二人の目が、しなびてるそれのところで交差する。
 代わる代わるに触ってみるも、やっぱりそれはふにゃふにゃだった。
「きっと、ボクの努力が足りないんだよ。待ってて、もっとがんばって広げてみる」
「無理! 入れようとしても、こっちへっこむし」
「そんな……じゃあ、どうすればいいの?」
 落胆したあゆの声が耳に痛い。
 こいつだって俺の体の一部なんだ。
 なんでこんなに軟弱なんだよ。
 なんだか、思い切り殴りつけてやりたい気分に駆られたが、すぐに思い直す。
 男なら当然の防衛本能が働いたのだろう。
 こいつを拷問に使われたら、なんて考えるだけでも恐ろしくなる。
 と、そこであることを思いついた。
 俺のそれは今じゃこんな体たらくだが、そうじゃない時だってある。
「……うーん、時々こいつって硬くなって大きくなったりするんだよなあ」
「そうなの?」
「そうそう。結構大変なんだぜ。体操服着てるときとか、こんなとこがモッコリしてたら恥ずかしいだろ?」
 それでからかわれたりしている奴をもう何人も見てきている。
 今のところ俺は大丈夫だが、油断はできない。
「たしかに恥ずかしいかも……。ひょっとして、学校の男の子がズボンをいじってるのはそれでかな?」
「多分、位置変えようと必死になるんだよ。そんな時にボールが当たったら、折れるかもしれないしさ。男って大変なんだぞ。これ守るためにいつも命かけてるんだ」
 本当に命がけだ。
 油断してる奴は、あぐらをかこうとして金玉をカカトにぶつけたなんて話もある。
 常在戦場。金玉の所有者に油断をしていい時間なんてない。
 まあ、女にはあの痛みは分からないから黙っておく。
 それに痛いとか男が女に泣き言言うのは恥ずかしいことだ。
「赤ちゃんを作るための大事なところだし、仕方ないんじゃないかな」
「うーん、そう言われてみると使命感を感じるな」
 しかし、大事なときに硬くならないんじゃ意味ないよなぁ…
 俺の体の一部なのに俺の自由にならない。
 それが、すごくもどかしくて悔しい。
「それで……どうしたら硬く大きく出来るの?」
「いや、そうなる条件が分からないから困ってるんだ。いつも、勝手に大きくなって困るし」
 と、そこまで言って、あることを思い出した。
 手っ取り早く硬く大きくする方法があったじゃないか。
 でも……あれは痛いからあんまりやりたくない。
 でも、そうなんだよな。
 あゆと一緒にいたいなら、それも我慢するしかないかもしれない。
 そう決心して、俺は口を開いた


「方法が一つだけ、ある」
「えっ? あるの?」
「こいつをいじりながら、口に入れるんだ」
 男は我慢だ。
 きっとまた、凄く痛い思いをするだろうけど、あゆといっしょにいるためなんだから。
「く、口に入れるの?」
「前にそうやったら、信じられないくらいに腫れ……いやおっきくなった」
 腫れたなんて言ったらあゆが心配する。
 この際、パンパンに腫らしてしまってもいいだろう。
 それでも硬くなるんだから、あゆのあそこに入れることは出来るはずだ。
「でも……そこおしっこの出るところだよ」
「分かってる。でも、赤ちゃん欲しいんだろ? もうすぐ日が暮れるし、それ以外の方法は分からない」
 俺だって痛いんだ。
 ちょっと汚いのくらい我慢して欲しい。
「うん、そうだよね。我慢するよ」
 真剣な表情で、あゆは気合を入れるように力強く頷いた。
 そして、俺の前でしゃがみこみ、それに顔を近づける。
「えと…それじゃあ…す、するね?」
 見上げながら、おっかなびっくり、おどおどした様子であゆが尋ねる。
「お、おうっ。任せたぞ!」
 その気持ちが伝染したのか、俺もおっかなびっくり答えた。
 あゆの手がアレに向かってそっと伸ばされる。
 細い指が一本ずつ、やさしくアレに絡みついていった。
「ね、ねぇ…どうやっていじればいいのかな?」
「お、俺もわからないんだっ」
 ……そういえばさっきあゆが触ったとき、指が上下に動いたらなんかヒクヒクした気がする。
「そのまま上下に擦るようにしてみてくれないか?」
「う、うんっ」
 言われるままに指全体を上下に擦り始める。
「うくっ!?」
「ご、ごめんっ! い、痛かった…?」
「い、いや。大丈夫だ。続けてくれ」
「う、うん…」
 なんだ、今の…?
 電気が走ったみたいにびりびりと何か感じた。
 しゅっしゅっとゆっくりと指が動いてアレを擦っていく。
 びりびりとした何かは、それに合わせてくすぐったいような何とも表現できない不思議な感覚を生じさせた。
 な…んだ、これ…?
 頭がボーっとする。
 体の芯が風邪をひいたときみたいに熱くなっていく。
「あ、あゆ…そろそろ…く、口で…」
 アレはさっきに比べて少し硬くなっていた。
 このまま指でしてもらってもいいんだけど……なぜだかそれじゃあ物足りない。
 なんだこれ…なんだこの気持ち…わかんねぇ…
「………」
 あゆはやはり戸惑ってる。
 鼻が付きそうな距離までアレに近づいているけど、見つめたまま固まっている。
 おしっこが出るところを口に入れるんだ、そりゃ戸惑いもする。

「ボク、頑張るっ!」

 あゆがぐいっと身を乗り出す。
 そのまま小さい口をいっぱいに広げて、アレを…
「っ!? うぐっ!!」
 暖かいものに包まれてる。
 ぬるぬるしてて、なんか…気持ち…いい…
「んんっ!? ぷはぁっ!」
 あゆはいきなり口を離した。
「く、口の中…いきなり大きく…」
 びっくりしているみたいで日本語がめちゃくちゃだったけど、いいたい事は分かった。
 アレはびっくりするぐらい大きくなってる。
 そうだ、この状態だ。
 いつも大きくなって困る状態だ。
 いや、あの時でもこんなにはなりはしない。これはそれ以上?
 もう、なんというか、爆発寸前の火山が股間にぶら下がっているような感覚。
 アレは今にもミチミチと聞こえてきそうなくらい、はちきれんばかりの大きさになっていた。
「こ、こんなに…なるんだ…」
 大きくなったアレを見つめるあゆ。
 そのまま近づいたと思ったら、アレをまた口に…
「えっ…?」
「もうちょっと硬くした方がいいよね? ボクなら大丈夫だからまかせてよっ」
 健気な笑顔で言われると、なんだか胸の辺りがキュンとなる。
 この気持ちがなんなのか分からないけど、悪くはない。
 大きくなったせいか、さっきよりも咥えづらそうだったけど、あゆは俺のアレを根元まで口の中に入れた。
 そのまま顔を前後に動かして、指でしたように舌でアレをこすり始める。
 指でする比じゃない。
 気を失ってしまいそうなぐらいびりびりが体を走る。
 よだれが垂れてきてしまう。
 なんか情けないけど、逃げ出さないであゆにされるがままの状態を保つだけで精一杯だ。

 ちゅぷっ、ちゅぷっ…

 まるでアイスキャンディーを舐めているときみたいな音が聞こえる。
 形は似ているし、実際あゆはそういう感覚でやっているんだと思う。
「はぁっ、はぁっ…」
 ぬるぬると擦られるので頭がおかしくなりそうだ。
 これが子供を作るために必要な方法なのだろうか?
 だとしたら、大人はこんな事をやって俺達を作った……?
 信じようと思っても信じられない。
 でも、未体験の快感はそれが真実であることを俺に告げているようだった。

 ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅぷっ

 頭がボーっとなる。
 何も考えられなくなる。

 ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅぷっ

 段々と腹の奥から何かがこみ上げてくるのを感じる。
 なんだ…これ…おしっことも違うみたいだし…
 ……ってもしかしてこれがっ!?


「あゆ、出る。おたまじゃくしが先っぽまで来てるっ」
 このままされてたらあゆの口の中で出してしまう。
 それじゃ意味がないんだ。
 あゆのおしっこの穴に入れて、赤ちゃんを作るんだ!
 おしっこの穴に精子ってやつを出さなきゃいけないんだ!
「ええっ!? じゃあ、早く入れないと。いいよ、入れて!」
 あゆがスカートを捲くり上げ、ぴっちり合わさったすじを力いっぱいに広げてみせる。
 あゆが渾身の力を込めて広げたすじの中……。
 そこには、ここに入れろとばかりに大口を開けた穴があった。
 いったい、こんなでかい穴から出すおしっこってどんな太さなんだよ、と今更ながらに思ったが、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
 今にもはちきれんばかりに膨らんだ俺のものを、その入り口にあてがった。
「あゆ、入れるぞっ」
「うんっ」
 躊躇わない。
 俺たちが離れ離れにならないためだ。
 いくぞっ…!!

 ブスッ

 アレにべっとりついていたあゆの唾液が若干潤滑油の働きをしたとはいえ、濡れてもいない膣にドリルを思わせる強引な挿入。
「うぐぅっ!?」
「ひぎぃっ!?」
 それがもたらした結果は言うまでもない。
 膣内の猛烈な摩擦と処女喪失の激痛に白目をむくあゆ。
 再びずるむけの激痛を味わって白目をむく俺。
 記念すべき初体験の思い出は、ピンクに染まった雪だった。



 今思えば、お互いに剥き出しの股間を押さえて雪の上でもだえていたあの姿を誰かが見ていたら、さぞ滑稽なものだっただろう。
 必死に我慢していたようだが、帰り道あゆの歩調はかなり怪しいものになっていた。
 もの凄く痛かったんだろう。当たり前といえば当たり前だ。
 赤ん坊も当然出来なかった。
 あゆは生理が始まってなかったし、俺は俺で精通前。お互い出るモノなしでは妊娠するはずがない。
 まったくもって……あまりに痛すぎる若気の至りだった。








「……というわけで、思い出したわけだが。今思うと、あそこで赤ん坊出来てたら相当まずかったんじゃないだろうか?」
「凄くまずいと思うよ……」
 社会の体面上とか色々あるけど、何より生まれてくる子供が不幸そのものだろう。
 あの時、二人は子供の幸せなんてまるで考えてなかった。
 仕方ないとはいえ、万が一ということもある。
 性教育は、小学校一年生からやってもいいんじゃないだろうか?
 子供を作って育てるということの重大さを知るのは、早いに越したことはないはずだ。
「さて、まあそれはそれとして」
 真っ赤になったあゆを一旦部屋に連れ込んで、お茶会は自然解散となったが、やっぱりこのネタを眠らせておくのはもったいない。
 何しろ、ここには名雪という絶好の聞き手がいるのだから。
 さて、そういうわけで、名雪の部屋へレッツゴー!
 が、部屋から出ようとするとシャツの裾をあゆに掴まれた。
「ね、ねぇ…もしかして……?」
「トイレ行くだけなんだが」
「な、なんだ〜そ、そうだよね〜」
 ホッと安心したように手を離すあゆ。
 すかさず名雪の部屋へとダッシュ!
「祐一君の嘘つきー!!」
「おーい、名雪。実はあゆってさ……」
「わーっ、わーっ、止めてよ祐一君! ボク、それ言われたらもう生きていけないよ!」
「いやいや、図らずもあゆも名雪のヒミツを知ってしまったわけだからな。ここは女同士、ヒミツを共有すべきだろう」
「名雪さんの秘密? な、何なの、それ?」
「ま、さっきはぼかしてたからなぁ。というわけで、おーい名雪」
「なに、祐一? 呼んだ?」
 机に向かってレポートでもやっていたのか、軽く肩や腕をほぐしつつ部屋から名雪が出てくる。
「おう、実はだな、ここのあゆあゆときたら、なゆちゃんに負けず劣らずのエッチィ奴でな。いや、自覚ありだったことを考えると……」
「祐一君! それはまた今度にしてよっ。心の準備が出来てからに〜」
「仕方ないなあ……。じゃあ、あゆあゆ。今日こそ本番やるぞ」
「な、なんでそんなことになるの!? そっちはもっと心の準備が」
「おーい、名雪……」
「わ、わかったよっ。やるから、やっぱりやめてーっ」
「まったくもう、あゆちゃんたらカマトトぶっちゃってぇ。8年前から、準備OKだったなんて、祐一もうカンゲキー」
「……祐一、気持ち悪いからやめて」
 思いっきり嫌そうな顔をされた。いや、もう露骨に嫌悪の顔。
 俺のオネエ言葉は名雪には不評らしい。
 くそう、今に見てろ。今にゲイバーのクイーンになって見返してやるからな。
 って、何に闘志を燃やしてんだよ俺は。
 とりあえず、あゆが泣き付いて仕方ないので今は勘弁してやろう。
 ……今はな。
「おう、じゃあな名雪。また後であゆのビッグな秘密を教えてやるぞ。俺に惚れた女は、みんな天然エロだったんだ」
「祐一君、もうやめてよっ」
「……ひょっとして、あゆちゃんもなの?」
 きょとんとした様子だが、名雪にあまり驚いた様子は見られない。
 多分だいたいのことを悟ったんだろう。
「ま、それは後のお楽しみってことで。さあ、部屋に戻るぞあゆ。あの時同様にやってくれ」
「あ、あの時って、いきなり口!? それに、今の名雪さんのその反応は何なの!? うぐぅ〜!」
 パニくるあゆを肩に担ぎ上げ、笑いをこらえながら部屋に戻る。
 まあ、あれだよな。
 名雪もあゆも、今は恥じらいを持つ歳相応の女の子になっていて、俺は逆に狼のような男になってしまったわけだ。


 でも、あの頃の健気にちっちゃかった名雪とあゆにもう一度会いたいなあ。





 って、それじゃ正真正銘のヘンタイじゃないか俺!






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【後書き/by エルラ】
何やってるんでしょうね、自分達。
と、のっけからマヌケな一言でわはーです。
labyrinthやちびあゆシリーズのaceさんと共同制作したSSをお送りしました。

見て分かると思いますが、このSSはOLSONさんの『はじめてのおふろ』を参考にした三次創作です。
あちらも原案に僕が関わっているので、実際は続編と言ってもいいのですが、OLSONさん驚かせるために無断で製作に入ったので、一応三次という扱いに。
後から公式設定(?)として承認していただけることを祈ってます(ぉぃ)

どうしようもなく頭悪いSSですが、一応あゆシナリオの補完みたいなつもりでやってみました。
あゆはあの精神年齢で何故夜這いじみたことを思いつけたのか、って疑問への一つの答えがこれです。
真面目に考えるとやっぱりろくでもないですね。

この場を借りて、元ネタとなった作品の執筆者OLSONさんと、共同制作の誘いを受けてくださったaceさんにたくさんの感謝を。
そして、最後まで付き合って下さった方、ほんとにありがとうございましたー。

ところで、『はじめてのおふろ』が恥風呂なら、今回は恥体験になるのでしょうか? いえ、なんでもアリマセン。



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