やっと祐一に7年間の想いが通じて……
お母さんも無事に帰ってきてくれたけど……
わたしは最近ちょっとモヤモヤした気分だよ。
季節は6月中旬。
今日もザアザアと雨が降っていた。
気分が晴れないのは雨のせいかな?
せっかくの土曜日なのに今日も走れなかったし……
それを思い出すと気分は滅入る一方だった。
「うー、制服はびしょびしょだし、走ってないしつまんないよ〜」
なんとなく独り言。
わたしは重い足取りで学校から帰ってきたあとベットに横になってしばらくぼけっとしていた。
部室でミーティングしていたせいで祐一とも一緒に帰れなかったし
最悪だよ。
でもいつまでもこうしてるわけにはいかないよね。
ぐっしょり湿った制服はとても着心地が悪かった。
ベッドから降りて腰を床に下ろした時、机に置いてある小さな鏡がふと目に入る。
「…………」
どうせシャワー浴びるし、いいかな?
そう自分にいい聞かせて鏡を目の前の床に置く。
「うー、やっぱり変だよ」
どうして今まで気にしなかったんだろ……
わたしはパンツを脱いで鏡に映った自分の両足の間をじーっと見つめていた。
人差し指と中指で広げて中に隠れた物を映す。
いつ見てもなんだかおかしな形をしていると思う。
「祐一の方がかわい……って、わ」
わたし凄い恥ずかしいこと言ってる〜。
でも、やっぱり祐一の方が見た目はいいと思う。わたしのは絶対変だよ。
わたしだけなのかな?
お母さんや香里のは見たことないし……
男の子のは絵とかでもよく見てたから知ってたけど、女の子のは考えたこともなかった。
というより、祐一と一緒に寝た日に祐一に触られるまで、中がどうなってるのかということを考えたこともなかったんだけど。
実際に見てみると保健の授業で見たものとはまったく別のものだった。
祐一のはほとんど絵で見たまんまだったのに。
「うんっ……」
うー、気持ちいいよぉ。恥ずかしいのに……
わたしは中のなんだか出っぱったところを人差し指でさする。
何回か自分で触っているうちにあの時感じたきもちよさの元がなんなのかわかってしまった。
本当は凄い痛かったんだけど……
祐一のが入る前に何かにかすって凄い気持ちよかったんだよね。
「うー」
もう何度かやってて気持ちいいのに慣れてきたのかもしれないけど……
何か物足りないよ。
そう、祐一が足りない。
祐一は何故かあれから一度もわたしと一緒には寝てくれない。
わたしはずっと待ってるのに、いつも声をかけてくれなかった。
「嫌われたのかな?」
そう考えると悲しかったけど、前以上に一緒にいてくれる祐一を見ているとそうは思えなかった。
「…………」
何かココに入れたら祐一と一つになった気分になれるかな?
うん、何かが挟まってるようなあの感じがあればそんな気分になれるよね。
でも何がいいんだろう?
そう思って部屋を見回してみる。
シャーペン…はダメだよね。細すぎるし刺さったら痛そうだ。
あっ、でも……ねこさんシャーペンのねこさんの方なら……。
ねこさんのキャップだけ抜けて取れなくなったら大変だね。
それは刺さるよりも嫌だった。
目覚し時計は……
うー、入れる以前の問題だよ。
考えるまでもなく、大きすぎて入るわけがなかった。
そうだ。
「キュウリ……」
そうだよ、あれなら大きさも同じくらいだし尖ったりもしてないからいいよね。
わたしは冷蔵庫のキュウリを取りに行こうと思って立ち上がった。
でも、そこで数日前の教室での香里の言葉が頭の中にふと浮かんだ。
『キュウリのイボには雑菌がたくさんついているから気をつけなさいよ』
雑菌…ってばい菌のことだよね。
そんなものを入れたらやっぱり体に悪いかな?
ばい菌のせいでそこが腫れたり化膿したりするのは恥ずかしいを通り越して怖かった。
「…キュウリはやめよう」
香里の言うことはいつも頼りになるよ。
でも、香里はなんでそんなこと言ってたんだろう?
やっぱりキュウリのイボについても勉強してないと学年一位は難しいんだよね、うん。
ブルッ!
よく考えたら湿った服のままパンツを脱いでいたんだ、わたし。
体も冷えて当たり前だった。
寒いよ祐一。どうしてあの時みたいに温めてくれないの?
わたしは悲しくて仕方なかった。
わたしもう耐えられないよ。
なんだかそう思った瞬間……
わたしは服を全部脱ぎ捨てていた。
お母さんは、今日は遅いって言ってたよね。
つまり今この家にいるのはわたしと祐一だけ。
そうだよ、確認すればいいんだよ。
嫌われちゃうかもしれないけど……
こんなに寂しいくらいなら嫌われちゃったほうがスッキリするよ。
でも……
こういう場合どう言えばいいんだろう?
「祐一わたしとえっちし……」
ボッ!
そこまで言いかけて顔が熱くなった。
そ、そんな恥ずかしいこと絶対言いたくないよ〜。わたし女の子なのに。
何かもっと恥ずかしくない言葉は……
「祐一わたしとせっく……」
もっと嫌だった。
交尾じゃねこさんだし、もっと上品な言い方ないのかな。
「祐一、寒い」
ダメ、祐一鈍いからこの格好で言っても『だったらまず服を着ろ』って言うに決まってるよ。
「黙ってわたしのモノになりなさい」
…これじゃ香里だよ。
祐一にわかってもらうにはどうしてもそのまま言うしかないようだった。
そんな恥ずかしいこと言えるわけないよ〜
独り言で言うのすら恥ずかしいのに、祐一を前に言えるわけがない。
「くしゅん!」
寒いよ〜。
もう我慢できないよ。だけど恥ずかしいし……
今までこんな時わたしはどうしてたかな?
わたしは今までのことを必死に考えてみた。
考えて考えて考えて……
でも出た答えは一つだけだった。
「くしゅん!」
うー、ひょっとしたら明日風邪かも。
それはおいといて……
やっぱりわたしは昔からそうだったんだよ。
どうして忘れちゃったんだろう?
あの時の気持ちを……
わたしは裸のまま部屋を出てお風呂に向かった。
祐一は部屋にいるので、そんなわたしの姿に驚く人はいない。
…よく考えたらいててもお母さんは驚かないよね。
『名雪風邪をひくわよ』って言うだけかな?
「くしゅん!」
ごめん、お母さん。もうひいてると思う。
とりあえずシャワーを浴びて体と髪をしっかり乾かす。
体がほかほかして気持ちよかった。
そして裸のまま家の中を歩く。
「…………」
うう、お風呂上りに裸で歩き回るのってこんなに気持ちよかったんだ。
子供の時、祐一とお風呂上がりに裸のまま家中を走り回っていたことを思い出す。
「どうしてこんなことも忘れてたのかな、わたし」
でも、もうわたしも子供じゃないしこんなことしてちゃだめだよね……。
少し残念だけど、こういうのは誰もいない時だけにしよう。
やっぱり高校生になると、こんな姿お母さんに見られても恥ずかしいよ。
祐一は……
そう思ったところで、祐一の部屋の前についた。
うー、やっぱり緊張するよ。
これからわたしがすることに比べたらこのドアを開ける事なんて大したことじゃないけど……
開けたらもう後戻りは出来ない。
祐一から『好き』か『嫌い』かをはっきり言われるだろう。
…………。
……。
え?
わたしの右手が無意識のうちに祐一の部屋のドアノブを回していた。
「ん? 名雪か?」
ドアノブが回ったのに祐一が気付いたようだ。
もう引き返せない。
ううん、引き返さないよ。
7年前のわたしも今のわたしも同じわたしなんだから。
わたしは唇を噛み締めると思い切ってドアを開けた。
あの時、駅前にいた祐一の前に飛び出したように……
「……祐一」
「え? ええっ!? ちょっと待て、何でお前裸!?」
やっぱりびっくりするよね。
わたしだって祐一が裸で部屋に飛び込んできたらびっくりするもん。
でも、もうここまで来たら目を逸らさないよ。
祐一はベッドに横になりながら参考書を読んでいたみたいだった。
そんないいかげんな勉強の仕方はよくないと思うよ……。
違った。そんなことを観察しに来たんじゃなかった。
「え!? だからちょっと待てって! ていうかこれは夢か!?」
わたしは祐一寝転がっている祐一にそのまま覆い被さって、祐一のズボンとパンツを剥ぎ取った。
うん、ここまでは予定通り。
ズボンを脱がすのに手間取ったらどうしようとか思ったけれども、案外簡単に進んでくれた。
あとは……。
あ、あれ?
そのまま祐一のをわたしのに入れるつもりだったのに……
祐一の
おちんちん
は子供の時お風呂で悪戯に触れてみたときみたいに……
やわらかくて小さかった。
ど、どうしよう!?
こんなところで手間取ってると祐一に何か言われて……
そしたらわたしもう恥ずかしくて何も言えないよ〜。
「え、えっと…こうかな?」
とりあえず、おいなりさんみたいな袋を握ってみる。
保健の授業で習った、精子を出すのはそこにある睾丸の筈だからそれを刺激したら……
「ぐあっ!!」
えっ!? あ……
何やってるんだよ、わたし。
男の子が股間を蹴られると声も出せないほどに痛がってうずくまるのは、コレに衝撃を与えると激痛が走るためだった。
保健の知識と子供の頃の知識がごちゃごちゃだよ〜。
こうなったら……
わたしはゆういちの
おちんちん
の先を自分のを触る時のように人差し指でさわってみた。
「あ……」
どうやらあたりだったみたい。
祐一のは少し固く大きくなった。これなら……
わたしはそう思って自分のを右手の指で開いて……祐一のを左手でそこに……
「なあ」
「えっ!?」
気がつくと、手違いに慌てて完全に行為に没頭していたわたしを祐一が首をあげて見ていた。
七年前のあの日のような曇った目で。
嫌だよ……、そんな目で見ないでよ。
やっぱりあの時みたいに……
わたしは祐一に叩き落とされると思って目をつぶって歯を食いしばった。
「何がやりたいんだお前は?」
え……?
でも、それに対する祐一の言葉は意外にやさしいものだった。
「いきなり素っ裸で部屋に入ってくるわ、強姦まがいのことをするわ……まあ、嬉しいけどさ」
「嬉しかったの?」
「そりゃあ、名雪からこんなことしてくれるとは思わなかったしな。けど、何かの勘違いじゃないよな?」
「違うよ」
よかった、嬉しかったんだ。
わたし、嫌われてなかったんだね。
「わたし、あれから一度も祐一と一緒になれなくて寂しかったんだよ」
それを聞いた祐一は呆れたように溜息をついた。
「お前なあ、Hしたいならしたいと言ってくれれば俺はいつでもやる気満々だったんだぞ」
ボッ!
「そ、そんな恥ずかしいこと言えないよ! わたし女の子だもん」
「いきなり無言で男を襲う女のほうが恥ずかしいわい!」
うー、言われてみればそうかも。
いや、絶対にそう。
「で、でも祐一だって酷いよ。女の子にこんなことさせるなんて。わたし今すっごく恥ずかしいよ」
最初は祐一からだったのに……
「う……、確かにそれは悪かった。だけどお前だって『抱いて』とか言い方はいくらでもあるだろ」
「あ……」
そうだよ、その一言だけでよかったんだよ。
「考えもつかず、裸で突撃か……。名雪らしいというかなんというか」
「うー」
馬鹿だよわたし。それくらいだったらもっと前でも言えたよ〜。
「酷いよ、極悪人だよ。教えてくれればよかったのに」
「無茶言うな!」
「大体嬉しかったのなら祐一から来てくれればよかったのに、わたしはずっと…ずっと待ってたんだよ」
もう恥ずかしいか嬉しいのかわかんなくなってきたよ。
「だから悪かったって言ってるだろう、ていうか半分突っ込んだまま泣くな!」
「うー……」
半分繋がった状態のつなぎ目を見てますます恥ずかしくなった。
「だいたい、俺だってお前のことを思ってあれからずっと我慢してたんだぞ」
「え?」
祐一が気まずそうに顔を逸らす。
「……あんまりヤリたいとか言うと名雪が俺のこと嫌いになると思ったから」
え、それって……
そうだったんだ、祐一わたしのことを思って言い出せなかったんだ。
なんだ、二人とも勘違いしてたんだね。
でも、とても嬉しいよ祐一。
「わっ!?」
わたしは祐一にそのまま抱きついた。
温かくて気持ちいいよ〜
「さてと……んじゃ、せっかくだしそのまま最初の予定通り強姦してもらおうか」
「え……」
祐一、今なんて言ったの?
「俺はこのままこうしてるから、一人で全部入れて見せてくれ」
そう言って祐一はにやにやしながら手を広げて大の字になった。
「嫌だよ、恥ずかしいもん」
本当はちょっとやってみたいんだけど、まだ抵抗があるよ。
わたしは少し怒ったようなそぶりをして祐一から引き抜こうとする。
「わ!?」
が、祐一に足で挟まれて抜けないようにされてしまった。
「さあっ!」
いいもん、そっちがその気ならわたしだって……
「ぐあっ!」
「祐一、わたし握力25キロはあるよ」
ニッコリと祐一に微笑みかける。
わたしの手の先は祐一の大事な物が詰まった柔らかい袋。
感触は結構気持ちよくて癖になる……かも。
「わかった、わかったからやめてくれ! 俺がやります、名雪さんは楽にしてください」
あの意地悪な祐一がこんなに素直になるなんて……
これって本当に痛いのかな……?
だったらごめんね祐一。
「うう、お前本当に名雪か?」
「どういう意味?」
「なんか…普段に比べて攻撃的というか積極的というか」
祐一は少し首をかしげた後、何だか納得したような顔で言った。
「まるで、昔の名雪が帰ってきたみたいだ」
「そう…かな?」
ううん、自分でも気付いていたよ。
昔のわたしって考える前に行動してたんだよね。
あの時も……
祐一のところに雪うさぎを持っていった時も。
「って、何で泣くんだよ」
「うん、わたしね祐一のおかげでわたしを思い出せたんだよ」
この冬、祐一がわたしを抱いてくれなかったら……
わたしはいつまでも祐一に拒絶された時のまま、祐一をずっと影から怯えて見ていた。
これから先もずっと……。
「わたし、やっと祐一の隣に戻って来れたんだね」
「『上に』の間違いじゃないのか?」
やっぱり、祐一はちょっと意地悪だね。
だけど……
「えいっ」
「ぐあっ! もうやめてくれ、使い物にならなくなる!」
意地悪ならわたしも負けないよ。
(後日談:祐一)
あの日から名雪は変わった。
休みには遠出しようと俺を誘うようになったばかりか、突如志望大学を都心の大学に変えたのだ。
名雪は「やっぱり人間経験が大事だよね」とこともなげに言っていたが……
今までこの街を出ようともしなかった名雪にどういう心境の変化があったのか俺にはよくわからない。
相変わらずマイペースなところもあるのでいまいち考えが読めないのだ。
だが、これだけは言える。
俺は以前にも増して名雪のことが好きになってしまったみたいだ。
積極的になったあいつは少し影のあった今までより輝いて見えるようになった。
最近は早寝早起きの習慣もついたようで、名雪の弁当をもって学校に行くことも多くなった。
うかうかしていると俺が名雪に置いていかれそうな気がして、最近生活態度を改めようと本気で考えさせられている。
でも、名雪は本当はこんなやつだったんだよな……
7年前俺が名雪から奪った物は本当に大きかったのだと痛感させられた。
名雪、俺は絶対お前を幸せにしてやるからな。
いや、してやらないとな……
もっともこの調子だと俺のほうがリードされる可能性が高いが。
「ねえ、香里。やっぱりキュウリのイボまで知ってないと試験は難しいよね?」
と、人が感傷にふけりながら学年末の試験勉強をしている後ろで名雪が突然妙なことを香里に訊いていた。
「キュウリのイボ?」
香里は鳩が豆鉄砲くらった顔をしている。
そりゃ、いきなりキュウリのイボなんて言われたら訳がわからないだろう。
ていうか、何をどうしたら香里の成績とキュウリのイボが繋がるんだろう?
この辺が相変わらずの名雪ペースなんだが……
「あれじゃないか? チクワの中に何入れるかの話」
「そういえば以前そんな話してたわね」
北川、お前よくそんなの覚えてたな。俺も忘れかけてたのに。
「あたしがキュウリかチーズって言ったかしら?」
「そうそう、でオレが『チクワもキュウリもチーズも丸かじりが一番だ!』って言ったら相沢が……」
「『北川、穴があったら何か入れるのが男のロマンってもんだろう!』なんて言ってたかしら」
香里さん、こっちを睨みながら言わないで下さい。怖いです。
「で、そこで美坂が相沢を無視して」
余計なところまで再現するなっ!
「キュウリのイボには雑菌がたくさんついているから気をつけなさいよ。丸かじりするならなら洗ってからね」
「って流れだ、水瀬」
「そうだったんだ」
おい、たしかその後『キュウリって洗って食べるものだったのか?』ってオチを北川がつけたのが抜けてるぞ!
俺の下ネタだけ再現するなテメエら。
話が始まったところで会話に加わっておくべきだった……
「香里、祐一が言ってたのって男のロマンなの?」
ガンッ!
思わず頭を机にぶつける。
なんてこと訊いてるんだ名雪……。
「はあ、相沢君も大変ね。こんな奥手な彼女で……」
「どういうこと?」
「そのうち教えてあげるわよ」
「……?」
ニコッと呆ける名雪に笑いかけて話を流す香里。
いや、香里さん。奥手なのはそっち系の単語だけで、名雪は多分あなたの10倍は進んでいると思いますよ。
なんてことを知るのは数年後の話だろうなあ……。
END(昨日はアイテム初挑戦だったとか)
2003年2月17日
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