「今日はウナギが安かったんだよ〜」
水瀬家の食卓にはウナギ丼が二つ。
それもどんぶりからはみ出るほどウナギは大きかった。
「おおっ、これは美味そうだな」
ウナギなんて久しぶりかもしれない。
こっちに来てからだと初めてだな。
テーブルにはお吸い物やほうれん草のおひたし、そして大根を短冊切りにしたようなものがあった。
「これって大根か?」
「違うよ。それは山芋だよ」
「山芋?」
山芋っていうとよく摩り下ろして麦ご飯やマグロにかけるアレだよな?
「こういう食べ方もあるんだよ。すりおろす手間がないから作る分にはこっちの方がいいかな」
「なるほど…」
山芋はわりと好きなほうだからこうして出てくれるとうれしい。
「さて、それじゃあいただきますか」
「うんっ」
二人で手を合わせて「いただきます」をしてから食べ始めた。
「くー…」
名雪と一緒に同じ布団で眠る。
もうずっと続けてきたことだ。
いまさらどうって事はない。
なのに…
「どうして眠れないんだよ…」
分かってる。
分かってるさ。
食べてるときはそのおいしさですっかり忘れていた。
食べ終わって風呂に入ってさあ寝るぞって時に気づいてしまった。
ウナギや山芋って精力のつく食べ物じゃないか!!
ただでさえ最近していないのだ。
能力も全盛期なのに精力なんてつけたら…
これで一人だったらまた違ったかもしれない。
目線を隣に移す。
「すぅ、すぅ…」
気持ちよさそうに寝息を立てている名雪。
整った顔立ちとか、柔らかそうな唇とか、少しはだけた胸元とか…
劣情を生み出す要因に溢れている。
だからって…
「名雪、起きてくれ! 今ものすごくヤリたくて困ってるんだ!」
なんて起こすわけにもいかないしなぁ…
はぁっ…
仕方がない、気合を入れて眠ることにしよう。
頭から煩悩を振り払って眠ることに集中した。
少しずつ眠気が深まっていく。
ほら、頑張ればこうして眠れ… るんだ…
ん…
ぼんやりと目が覚めた。
壁にかかった時計で時間を確認する。
4時間ほど経っていた。
こうして目が覚めてしまったのは浅い眠りに入ったからだろうか。
もう一度深く眠るために寝返りをうとうとして気付いた。
いつの間にか俺は名雪に抱かれるような格好になっていた。
「…なぜだ?」
自分の行動を思い出そうとする。
………………
いや、普通に寝ていたはずだ。
特別何かしたりはしていないはずなんだが…
しかし、何でこんな格好なんだ…?
これじゃあまるで…
「けろぴー」
………………
「くー…」
そうだ、けろぴーだ。
名雪の夢の中で俺はあの畜生に成り果てたのだろうか…?
…まぁ、それな名雪が起きてから追求しよう。
中途半端に起きたせいでまだ眠い…
瞼を閉じ、暗闇を作った。
眠気は自然と沸いてくる。
じわじわとしみこむように眠気が押し寄せてくる…
むにゅっ
暖かくて、まるでぬるま湯のような…
むにゅっ
体全体を包む虚脱感が心地いい…
むにゅっ
そう、この暖かさと柔らかさが…
むにゅっ
「だぁっ! 乳をくっつけるなっ!」
眠気が覚めてしまった。
「にゅ…」
「あ」
名雪が小さく声を漏らす。
起こしてしまったか…?
「けろぴー」
ぐいっ
「おわっ!?」
両手で腰を掴まれて抱き寄せられてしまった。
俺の扱いはけろぴーとほとんど同じだった。
大き目の胸や柔らかい体が密着する。
寝ぼけていると考えたくはないが…
「けろぴー」
「俺はけろぴーじゃないっ!」
「にゅ…?」
「ほら、祐一だぞ?」
「けろぴー… 喋れたの?」
「………………」
両頬をつかむ。
ぐいっ
「んにっ?」
ぐいぐいぐいっ!
「ひゃっ、ひゃめへよ〜 へろふぃ〜」
「まだ言うかっ! このこのっ!」
「うぅ〜 へろふぃーふぁふょうほうに〜」
…ダメだ、やはり寝ぼけている。
意地悪したいという気持ちが高まる。
最近していなかったせいもあるかもしれないが、無性に名雪を抱きたかった。
口から手を離し、そのまま両手で胸をつかむ。
「あ、けろぴーダメだよ〜」
こうなったらもうどうにでもなれだ。
けろぴーになりすまして名雪とエッチしてやる。
手のひら全体で柔らかい胸の感触を楽しみながら、指先で乳首をはじく。
少し大きめ胸は、俺の手の中で形を歪め、手を離すと元に戻る。
程よい弾力は、触っていてすごく気持ちがよかった。
「んふっ… だ、ダメだよ〜」
名雪の声に艶っぽさが混じってくる。
我慢できなくなり、上着をはだけさせた。
興奮して硬くなった乳首が白い肌に映える。
名雪の匂いがする。
俺を興奮させ、安心させる匂い。
ずっと、腕の中で抱いていたい。
ずっと愛しつづけていたい。
名雪をベッドに押し倒し、胸にしゃぶりつく。
「んっ…」
硬くなった乳首を口に含み、甘噛みして引っ張る。
もう片方は、手で愛してやる。もう片方の手は名雪の太腿に移動させる。
外から内に、指先を少しずつ移動させていく。
「ふあっ!? け、けろぴー…」
名雪の中ではどんな光景になっているんだろうか…?
その光景を少し想像してみる。
ふかふかのカエルのぬいぐるみが名雪に覆い被さって、絶え間ない愛撫を繰り返す。
びっしりと緑色の毛で覆われた手や毛で覆われた舌は人がするのとはまた違う快楽を与える。
そして、驚くべきは舌の長さだ。
奥まで挿入できてしまうのではと思わせるほどの長さをもつ舌が名雪の体を這い回る。
そのたびに名雪が体を震わせ、身じろぐ。
カエルのぬいぐるみは無表情で名雪の体をさらに蹂躙して…
「シュールだ…」
軽く眩暈と吐き気がしてきた…
とにかく名雪だ。
名雪を抱こう。
薄気味の悪いぬいぐるみなんて忘れてしまえっ!
頭を振って、先ほどの光景を払った。
太腿を這わせていた指を、少しずつ移動させていく。
やがて、指は一番敏感な所にたどり着いた。
パジャマの上からでも微妙に湿っているのがわかる。
いつもよりスローペースにしているはずなんだけど…
していなかったのは名雪も一緒だったからな。
お互い溜まっているのかもしれない。
名雪から少し離れ、パジャマを脱がせた。
白い下着が露になる。
下着の隙間から指を入れると、確かにそこは湿っていた。
だが、これではまだ痛いだろう。
先ほどと同じ様に、口と手で胸を愛撫し、片方の手でアソコを愛撫する。
名雪の呼吸が荒くなる。
眠ったまま犯している。
それが、俺の心を昂ぶらせている。
ズボンの中のペニスは既に限界まで硬くなっていた。
まずい、先に1回出しておきたい…
こんなにも溜め込むなんて、俺自身余裕がなかったんだろうな…
ズボンと下着を一緒に脱ぎ、ペニスを外気にさらす。
さて、1回出すとしてもどうするべきか…?
どんな事をしようかと、想像が高まる。
………………
…胸?
おもむろに、胸でペニスを挟む。
前に一度された事があったが、あれはかなり気持ちがよかった。
胸を寄せて、俺のペニスを包み込む。
そのまま、腰を動かしてペニスを擦る。
しゅっ、しゅっ!
気持ちがいい。
柔らかくて、暖かい感触で包まれる。
やばっ… 本当にすぐ出るかも…
しゅっ、しゅっ!
擦るペースが速くなる。
「はぁっ、はぁっ…」
気持ちがいい。
俺は中毒にかかっている。
名雪に身も心も委ねている。
名雪の身体を使っていいのは俺だけだ。
今も、これからもずっと…っ!
「くっ!」
強烈な射精感が俺を襲う。
腰を前に突き出す。
偶然に、名雪の口が開いていた。
亀頭が名雪の口に入る。
ドクンッ! ドクン!
溢れるばかりの精液が名雪の口の中を満たす。
無意識のうちに、名雪はそれを飲み込んでいた。
それでも、飲みきれない精液は口からこぼれていた。
「はぁ… はぁ…」
気持ちがよかった。
久しぶりにした性行為はあまりに気持ちよくて、とてもじゃないが1度では足りなかった。
「…若いな、俺」
ペニスは萎えない。
出したばかりというのに、大きいままだ。
このままできそうだな…
名雪はまだ眠ったままだ。
こんな事をしておいていうのもアレだが心配になってしまう。
「いいのか〜 まだ寝ているともっとすごい事するぞ〜?」
胸を愛撫しながら今度はもう片方の指を下腹部に滑らせる。
胸の谷間からみぞおち、おへそと指を下へ下へと滑らせる。
「んんっ…」
名雪がわずかに体を震わせる。
遠まわしな愛撫が少しくすぐったいのかもしれない。
それでも目を覚まさない。
もしかすると、この愛撫も夢の中の出来事だと思われてしまっているのではないだろうか…
なんだか無性に悔しくなってきた。
こうなったら行くところまで行ってやる。
ズボンに手をかけてゆっくりと少しずつ下ろしていく。
ゆっくりと、名雪が起きないように…
多少のことでは起きないと思うが、ここは慎重に…
いつもの倍近くの時間をかけてズボンを脱がせた。
こうしてあらためて名雪の体を見ると、すごくきれいなラインだと思う。
大きすぎず、かといって小さすぎない胸。
その胸からは想像できないぐらい引き締まったウエストや太もも。
丸くてきれいで、すごくいやらしいお尻。
ヤバイ… 本格的に興奮してきたぞ…
指で一番敏感な場所に触れる。
直接的な愛撫は避けて、内股の方から少しずつなぞっていく。
指でなぞっていくと丸くて柔らかい花弁の形がよく分かる。
少し力を加えると下着と一緒に指が沈み込む。
下着に染み込んだ愛液が滲んで指を濡らした。
「はぁっ、はぁっ」
さっきよりも息が上がっている。
一番気持ちいい所を弄っているからだろう。
「だめぇっ…だめだよぉ、けろぴぃ…」
「………………」
やはり夢の中で俺はあの畜生になってしまっているらしい。
もう一度、名雪の夢を想像してみる…
ふかふかのカエルのぬいぐるみが名雪に覆い被さって、絶え間ない愛撫を繰り返す。
「もう、だめぇ… 欲しいの、けろぴーのが…」
せつなそうに、ぬいぐるみを見る名雪。
既に息絶え絶えだった。
ぬいぐるみは無言で股間からペニスを取り出す。
そのペニスにも、本体と同じく無数の毛が生えていた。
そして、舌と同じくその長さはすごいものだった。
まるで触手のようにウネウネと蠢くペニスは名雪の中に入りたそうに太ももや花弁の周りを這い回って…
「吐き気が…」
想像するんじゃなかったと後悔した。
異次元の生命体]を生み出してどうするんだ… 俺。
頭を振って緑色のモンスターを振り払う。
気持ちを切り替えて、名雪の下着に手をかけた。
ゆっくりと上に引き上げると下着と性器の間に愛液でできた銀色の糸ができた。
「眠っているのにこんなに興奮するなんて名雪はいやらしいな」
下着についた愛液を指ですくって舐めてみせた。
眠っている名雪にはわからないはずなのに、名雪の肌はさらに赤くなった気がした。
太ももをつかんでゆっくりと手前に倒すようにする。
俺に向けて性器を晒すような格好になる。
愛液で濡れた性器はキラキラと輝いて、入り口がわずかにピクピクと痙攣していた。
すっかり興奮してしまっている性器に口をつける。
ちゅぷっ、くちゅっ、くちゅっ
わざと音を立てるように舌を動かした。
普段は恥ずかしがってここまで大胆にするのはできないけど、今はおもいっきりできる。
ピチャピチャと音を立てて舌で小陰唇や大陰唇、クリトリスを転がす。
愛液はさっきとは比べられないぐらいあふれ出していた。
それを口をすぼめて奥まで搾り取るように吸い取る。
ジュルルルル…
いやらしい音が部屋中に響いている。
すごく行儀が悪いような、ちょっと罪悪感のようなものを感じるが気にしない。
今はそんなことを気にする余裕がない。
名雪を味わいたい。
夢の中でも俺に抱かれているんだと思わせたい。
強く、強く。
痛くならないように気をつけながら。
普段よりも強い愛撫をする。
気がつけば鼻をくっつけるぐらいにまで名雪の性器に顔を埋めていた。
口の周りも性器の周りも愛液や唾液でベトベトだった。
寝ている名雪を汚して、犯しているのにこんなにも興奮するなんて…
いや、だから興奮するのかもしれない。
汚れのないものを汚す。
それは人間の本能なんだと聞いたことがあった。
はじめに聞いたときは信じられなかったけど、今なら信じられそうだ。
している事は最低かもしれないが、こんな事をするのは名雪だけだ。
他の人にこんな事をしようなんて考えたこともない。
それに、名雪が嫌がるならもうしない。
だから、今だけは俺にされるがままになって欲しい…
ジュルルルルルッ!!
入り口に口を押し付けて溢れ出る愛液を吸い取った。
粘性のある、喉に絡みつく液体で胃が満たされていく。
他の人の味は知らないが、名雪の愛液はわずかに甘くていいにおいがする。
こんなに一生懸命吸っていると赤ん坊が母乳を飲んでいるのと似てるなと思ってしまう。
「ぷはっ…」
口を離すと、再び愛液が奥から溢れてくる。
ペニスはギチギチになって、我慢できないとばかりに時折ピクピク動いている。
「名雪、入れるからな…」
先を入り口に当てて、ゆっくりと挿入する。
少し力を加えるだけでペニスはするすると名雪の中に入っていった。
壁全体が俺を迎えるように奥へと引っ張っているような気がした。
奥まで挿入すると、途端にぎゅうぎゅうと締め付けてきた。
柔らかい壁や襞で亀頭や陰茎を包み込んで締め付けて離さない。入れたときとはまるで違い、抜くときはすごく大変そうだ。
太ももをつかんで、体全体で引っ張るように引き抜き始める。
ちゅぷちゅぷと音を立ててペニスが少しずつ引き抜かれていく。
抜きにくくて、やさしく包んでくれる名雪の中。
やがて、亀頭が出るか出ないかのギリギリまで引き抜いた。
そのまま力を込めて名雪の中にペニスを埋める。
ぷちゅっと音がなって、奥から愛液が溢れ出してきた。
「こんなに溢れてくるなら栓しても意味ないじゃないか」
愛液をすくって胸に塗りたくる。
ヌメヌメとした手で乳首を弄ると名雪の体がピクッと動いた。
そのまま乳房にも愛液を塗りたくる。
普通に触るのとは違う感覚がする。
ヌルヌルとしたこの感覚…
ヤバイ… これって結構いいかも。
癖になったらどうしようか。
まさか名雪にお願いするわけにもいかないしなぁ…
味わうなら今ってことかっ!
気がつくと腰が動いていた。
愛液をまんべんなく胸に塗って、揉み解す。
その間も腰を休ませないで前後に揺するように動かす。
クチュクチュと壁や襞がかき回される音がする。
結合部は愛液でベトベトだった。
その愛液も今は胸に塗りたくっている。
愛液のヌルヌルした感触と柔らかくて心地いい胸の感触を同時に味わっている。
いつになく興奮している。
夜食べた物の影響もあるのかもしれない。
でも、この興奮はそんなもんじゃない。
まるで熱病に冒されたみたいに頭はボーっとしている。
気持ちよくなる事しか考えられない。
腰を掴んで奥のほうまで貫くように腰を突き出す。
ジュプジュプといやらしい音が部屋中に響いて、俺の中の劣情をさらに掻き乱す。
挿入するたびに揺れる胸はその存在をめいいっぱい主張していて、ついじっと見つめてしまう。
わずかに頬が赤らんでいるところや、子供みたいに無邪気な顔で眠っていることがすごくドキドキする。
もう名雪が起きるかどうかなんて考えられなかった。
激しく腰を動かし、グチュグチュとわざと音を立てて挿入する。
普段は恥ずかしいって言ってここまでするのは嫌がるのだ。
何気に欲求不満だったのかもしれない。
名雪をめちゃくちゃにしたいという願望があったのかもしれない。
でも。それでも。
名雪の嫌がる事はしたくない。
名雪がいいよって言ってくれたら… 遠慮できない。
そのときのちょっと恥ずかしそうにする顔がたまらなくかわいくて…
はぁっ、はぁっ…!!
「名雪ぃ!!」
抜く間もなかった。
最後はほとんど無意識のうちだったんじゃないかと思う。
荒い呼吸を少しずつ整えていく。
スッキリしたらずいぶんと冷静に物事が考えられるようになってきた。
名雪の胸は愛液まみれになって、月明かりに照らされてキラキラ光っていた。
萎えきったペニスを抜くと奥のほうから白く濁った愛液と精液がゴポッと音を立てて溢れてきた。
うおっ、これってかなりエロくないか…?
なんだか変態っぽいのがアレだが、そういうのがまたゾクゾクとした快感になる。
背徳感がいい〜 とかそういうのなのかもしれない。
まだまだ未知の領域もあるんだなと納得してしまった。
これでまた一つ大人になったぞ!
…………じゃなくて。
何をやっているんだ俺…
冷静に考えると結構危ないことをしていた。
寝ている女の子を剥いて、半ば強制的にパイズリとフェラをさせた。
おまけに口の中に出して散々愛撫した後に挿入。
とどめに愛液を胸にぬったくったりして…
最後には中に出してしまった。
うわぁ… ダメ人間だ、俺…
罪悪感がのしかかる。
普通にこんなふうにするだけでも最悪なのに寝ている相手にするかよ…
今裁判にかけられて有罪を言い渡されても俺はその罪を全うするだろう。
それぐらい罪悪感で押しつぶされそうだ…
「…イチゴサンデー」
ってアホか!
そんなもので許されるわけないだろうがっ!!
「うぅ… 許しておくれ、名雪さんよ…」
よよよと泣き崩れながらウエットティッシュで体をきれいにしていった。
せめて起きたときに気持ち悪い思いをしないで欲しい。
できるだけ丁寧に、拭き残しがないようにしっかりと拭いてきれいにした。
…そうしている間もちょっとドキドキして興奮してしまって深く自己嫌悪になった。
目が覚めたとき、時計の針は6時をさしていた。
いつもより1時間ぐらい早い時間。
眠り始めた時間からすると寝足りないはずなのだが、頭はスッキリとしていた。
「ふぁぁっ…」
大きなあくびをひとつ。
そのまま起き上がって背伸びをする。
気持ちのいい朝だ。
実に気持ちのいい朝だ。
だが…
「やっちまった事に変わりはないんだよな…」
さわやかな朝は一気に胃が重たくなる暗い朝に変わっていた。
昨日してしまった事は最低なことだと思う。
だから、責められたなら素直にそれを受け止めようと思っていた。
「おはよう、祐一」
「あ、ああ。おはよう」
制服にエプロン姿の名雪が出迎えた。
昨日あれだけの事をしておいて俺より早く目覚めるなんてものすごくマイペースだななんて思った。
もし、名雪があの事を知らなかったら… なんて甘い考えは捨てる事にした。
してしまったのは俺の弱さだ。
自分を律するためにもここはひとつ厳しく…
「祐一、ちょっといいかな?」
「お、おう」
名雪に呼ばれて台所に入った。
「これをテーブルまで運んで欲しいんだけどいいかな?」
「ああ、いいぞ。任せておけ」
それぐらいならお安い御用だ。
目の前にある料理の載った皿を持とうとして気づいた。
今日の朝は和食らしい。
普段は鮭の切り身が乗っているはずのその皿には見慣れないものが乗っていた。
それは昨日食べたウナギのようであり、またちょっと違っていた。
「な、なぁ。これって何だ?」
「あ、それヘビの開きだよ。この前たまたま見つけたんだよ〜」
「ヘビかぁ… 俺初めて食べるかも」
「結構おいしいんだよ。精力もたくさんつくしね」
「滋養強壮がどうとか言われてるしな…」
…………おや? 何か引っかかるぞ。
いくらおいしくて栄養満点だからといって朝からこんなものを食べたらどうなるだろうか…
下手すると鼻血で噴水ができるかもしれない。
視線を移す。
小鉢に乗った赤いものはなんだかレバーっぽい。
たった今開けた炊飯器からはウナギのにおいがしている。
どうやらウナギを炊き込みご飯の具に使ったらしい。
しかし、どれもこれも見事なまでに…
………………
「ア、アノ… 名雪サン?」
「どうしたの? 祐一」
「モシカシテ… オキテマシタ?」
「何のことかな〜」
「イ、イツカラ…?」
「祐一の… すごく濃くってのどに引っかかっちゃったよ」
………………
瞬間的に体が反応した。
額を床に摩り付けるまで頭を下げ、両手を前に添えた。
土下座。
今俺がとっている体勢はどこに見せても恥ずかしくないぐらい見事な土下座だった。
「ごめんっ!! 謝っても許してもらえないかもしれないけど本当にごめんっ!!」
「わっ、そんな事しなくてもいいよっ! その… わたしも気持ちよかったからつい悪乗りしちゃって寝たふりしてたし…」
「へっ…?」
「だからおあいこだよ。恥ずかしかったけど…」
うわ… すげぇ恥ずかしい…
でも、なんだか嬉しかった。
名雪も一緒に気持ちよくなってくれたんだったら…
「でも、こんなに栄養取ったら今夜も眠れそうにないぞ…」
「それじゃあ今夜は… わたしがしてあげるねっ」
「うおっ?」
いきなり名雪が俺に飛びついてキスをした。
「先に寝ちゃったら嫌だよ?」
「お、おうっ! 名雪こそギブアップするなよ?」
「負けないよ〜」
朝からこんなやり取りはちょっと不健全かもしれないけどいいじゃないかと思う。
だって、こういうのも幸せのうちなんだから。
今だからできる事なんだからいっぱい楽しみたいな… なんてな。
「それじゃあさっさと食べて学校行くか!」
「うんっ!」
SSTOPへ
感想いただけると嬉しいです(完全匿名・全角1000文字まで)
日本語検索ツールバー
ピッキング対策、カギの交換、補助錠取付