「ただいま」
   ドアを閉めると同時に名雪が顔を見せた。
  「おかえり〜」
   買い物袋を持とうとする名雪だったが、あまりに重かったのか、持ち上げることすらできなかった。
   とりあえず軽い方を持ってもらい、居間に向かった。
  「頼まれたものってこれでいいのか?」
  「えーと…」
   袋の中身を一つ一つ確認してゆく。
  「うん、全部あるよ。ありがとう」
  「それより、晩飯作るのに必要だったんじゃないのか?」
   名雪より遅く帰ってきてしまっては意味がないような気がするのだが。
  「あ、大丈夫。今日で冷蔵庫の中身がピンチになりそうだったから」
  「で、今日のメニューは?」
  「えーと…」


   今日のメニューは揚げ物だった。
  「祐一、おいしい?」
  「合格」
   多分、家事に関してはクラスの中でも上位に行くぐらいだと思う。
  「いい奥さんになりそうなんだけどな…」
  「えっ!?」
   名雪の顔は火がついたように真っ赤になった。
  「あの目覚ましだけは勘弁願いたい」
  「う〜 これから頑張るよ〜」
   困ったように眉を寄せる。
   あれを治すのはよほど大変みたいだな。
  「期待だけはしておく」
  「う〜」




   夜。
   夜は気分が鬱になる事がよくある。
   …秋子さんが亡くなったのが夜中だったことをまだ引きずっているみたいだな。
   そのまま眠れなくなってしまう前に強引に眠りにつく事にした。
   ………………………………
   …寝られない。
   ガチャッ
  「よかった、残ってたか…」
   棚の奥にあったウイスキーを出し、ついでにおつまみになりそうな物も出した。
   なんとなく寝酒でもしようと思い立ったのが始まりだった。
   寝れないときに無理に寝ようとしても辛い。
   秋子さんが死んでから、時々こうして寝酒をするのが習慣になっていた。
   明かりの落ちたダイニングには俺だけしかいない。
   グラスにウイスキーが満たされる音がしんとした室内に響き、また静寂が俺を包んだ。
   そのまま一気にあおった。
  「げほっ!?」
   あまり酒は得意ではなかった。
   でも少しでも酔えば寝られると思い、それからはゆっくりと空けていった。
  「秋子さんが見てたらなんて言うかな…?」
   自嘲気味の笑みが漏れる。
   やがて、アルコールが程よく回り眠気が起きた。
   グラスや食器を片付けると、部屋に戻った。
   ばたっ
   部屋に付くなり、ベッドに体を投げ出した。
   思ったより酔っているようだな…
   そのまま意識は暗い闇に堕ちてゆく。
   どこまでも果てしない、底なし沼のような闇へと…




   泣いていた。
   ベッドの近くで名雪が泣いていた。
   狂ったように泣いて、泣き止んだらまた泣き出した。
   涙が止まらない。
   俺も泣いたまま、その涙を拭うことをしなかった。
   大きい悲しみがあった。
   大切な人をなくした。
   その人はもう帰ってこない。
   どんなに、どんなに待っても…
   秋子さんは帰ってこない。
   それを知ったとき、涙を拭うのをやめた。
   涙なんて、枯れる事はないから。
   思い出せばそのつど溢れて頬を伝い、心を揺する。
   なくしたものが大きければ大きいほど痕は深く、癒すのに時間がかかる。
   多分、俺は…
   この傷を癒せないまま過ごすのかもしれない…








  「逃げる事は受け入れられない人がする一番の手段」
   逃げ出したいだろう。
   すべて忘れてしまいたいだろう。
   もし、それが一時でも心の傷を和らげてくれるのであれば…
  「…色々な人を見てきたけど、強い人は最後は向き合って立ち向かった。人は受け入れなければ行けない傷を背負って生きていくんだから…」
   それは正しい事だと思う。
   自分も、たくさんの死を受け入れてきた。
   大切な人を、たくさん失ってきた…
   でも…
   まだこの死を受け入れるには早すぎるのではと思ってしまう…
   それは甘さか、それとも未練か…
  「信じてあげて、彼女の力を。それだけの力が、彼女にはあるんだから…」
  







   ………………………………
   …目が覚めた。
   嫌な夢を見た。
  「…勘弁してくれ」
   もう見たくない夢だった。
   気づけば涙の跡が頬に残っていた。
   …酷い顔だろうな。


  「今日は遅刻しないで済みそうね」
  「そうだな」
   名雪は俺より早く起きていた。
   最近の名雪は珍しくきちんと起きる。
   朝食を作らなければならないのもあるかもしれない。
   大量の目覚ましが必要である点と時々やる寝坊が強烈なのが改善点でもあるが。
  「祐一、あさっては土曜日だね〜」
  「なんかようやく休みって感じだな」
   最近色々あったからな…
   一週間がすごく長く感じる。
  「土曜はお昼どうするの?」
  「うーん、どうしようかな…?」
   いつもなら家で食べる所だろう。
  「たまには外で食べない?」
  「それもいいかもな」
   気分転換にはいいだろう。
  「そういえば今朝のチラシで百花屋がセールをやってるとか書いてあったよ」
  「決まりね」
  「楽しみだよ〜」
   それから学校の門をくぐるのは間もなくだった。
   休み時間、名雪が誰かに呼ばれて廊下に出た。
   呼んだのは気の弱そうな男子だった。
   見覚えがない事からすると他所のクラスの男子だと思うんだが…
  「部活のメンバーか?」
  「でも、男子よね?」
  「男子陸上部じゃないのか? 近いうちに男女で計測会やるみたいだし」
   少し気になったが、詮索するのも気が乗らなかったのでそのまま忘れておくことにした。
   頑張っている所に水を差すのもいけないしな。




  「お、高井。水瀬呼んできたか?」
  「う、うん…」
   高井君はいつも以上におどおどしていた。
   村田君は不機嫌そうで、そして申し訳なさそうな顔をしていた。
  「どうしたの?」
  「あ、ああ… 昨日の件なんだけど、一応集まったぞ」
  「本当?」
  「ああ… でも、本当にいいのか? 5人ぐらいいるんだぞ?」
  「うん。問題ないよ〜 できれば村田君や高井君にも参加して欲しいな…」
  「……うん」
  「ああ…」
   わたしは7人分の白を受ける光景を想像してみた。
   昨日よりもずっとたくさん真っ白い時間が続く。
   それはすごく嬉しいことだった。
   長い間真っ白になれる。
   何もかも忘れていられる…
   気づくと、指がお腹の下のほうに行きそうになっていた。
   …危ない、危ない。
   わたしは二人にお礼を言うと、教室に戻った。
   わたしは7人分の精液を受ける光景を想像してみた。
   昨日よりもずっとたくさん真っ白い時間が続く。
   それはすごく嬉しいことだった。
   長い間真っ白になれる。
   何もかも忘れていられる…
   気づくと、指でアソコを刺激していた。
   …危ない、危ない。
   わたしは二人にお礼を言うと、教室に戻った。
   くちっ… くちっ…
   歩くたび、僅かに濡れたアソコからエッチな音が響いた。
  「バレちゃうかな…?」
   下着に軽く触れるとそこはすでにべっとりと濡れていた。
  「う… 替えの下着あったかな?」
   購買で下着を買うと、トイレで穿き替えた。


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