バタンと音を立ててドアが閉まった。
信じたくない現実。
学校に行くにしては少し遅い時間に目を覚ました。
ピーンポーン
玄関からチャイムが突然鳴ったのは、ドラマがクライマックス付近になったあたりだった。
「あら、手伝ってくれるの?」
パンッ!
おいてくれと繋がる前に、香里の平手が俺の頬を捉えた。
…秋子さんと名雪がふたりで台所に立っていた事。
暖かい部屋に醤油系の美味しそうな匂いが広がっている。
些細な思い出だった。
皿の中には色とりどりの野菜が入ったシチューが入っていた。
「それにしてもうまいな…」
そんな笑い声に混じった音が聞こえてきたのは小さな足音だった。
それから香里は後片付けを済ませ、北川と一緒に帰っていった。