1月 29日 金曜日
今日も普通の一日だった。
校門で栞に会い……。
学食で膨大な弁当を食べ……。
放課後は栞とデート。
今日も、栞はどこにでもいる普通の女の子だった。
普通の……女の子だったんだ。
今、俺は電話の受話機を震える手で握り締めていた。
呼び出し音が続く。
ガチャ
「……美坂です」
「美坂かっ!」
「……え? 北川君!?」
「栞はっ! 栞は大丈夫かっ!?」
「ちょ、ちょっと、落ち着きなさいよ。こんな夜遅くにどうしたの?」
戸惑っている美坂に俺は一気にまくし立てた。
「さっき救急車のサイレンが聞こえた! まさか、し、栞じゃあ……」
「大丈夫よ、栞ならぐっすり寝てるわ」
「本当か! 本当なんだな!?」
「本当よ、そんなことで嘘ついてもしょうがないじゃない」
「本当か……良かった……」
「大丈夫よ、だから安心して」
穏やかな美坂の声。
「本当に……良かった……」
「……どうしたの?」
「……」
「……北川君?」
「……」
「……やれやれ」
「……」
「はいはい、男が泣かないの」
「……」
「……ありがとうね」
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