ブレイブハート 〜奇跡は心〜   TRAVEL 14   リオラハ遺跡探索 前編





     
    リオラハ遺跡の状態はミシオの話通りひどくなかった。

  封印のおかげか、保存状態はかなりよかった。

  「これなら、確かに落盤を心配する必要はなさそうだな」

  ジュンは安心したらしい。

  俺達は、魔法で明かりを作ると中へと突入した。









  「う〜怖いよ〜」

  祐一の腕にへばりついてるのはナユキだった。

  入るなりこのありさまだったのである。

  「ナユキ・・大丈夫だから離してくれないか?」
  「う〜やだよ〜怖いもの〜」

  このやり取りはすでに10回目である。

  「あきらめろ、ユウイチ」
  ぽんと肩をたたきながら、同情する視線を向けるジュン。

  「この状態で戦闘になったらどうするんだよ・・」

  周りの壁は広いし、戦闘になっても場所を心配する必要は無いが・・。

  一番危険物を抱えているナユキがこの有様じゃなあ・・。
  
  下手すりゃ、この遺跡ごとモンスターをふっ飛ばしかねんぞ。

  「大丈夫だよ〜ちゃんとするから〜」
  腕の中でがたがた震えながらいわれても説得力無いぞ・・。

  「・・ユウイチ、階段」
  地下に下りる階段か・・。

  「行くぞ、皆」

  俺達は慎重に階段を下り始めた。






  天井の高い広い通路に出た。

  すでに、手元の明かりでは天井が見えないほどだ。

  「気をつけろ。道が広い」

  ユウイチは、皆を振り返りながら言った。

  暗闇からいきなり襲撃を喰らう可能性もあるというわけだ。

  ユウイチ達は慎重に歩を進めた。

  しばらくまっすぐ歩いていただろうか、大き目の扉がある。

  しかし、不自然な風景だった。

  半開きだったのである。そのままだったのかもしれないが

  「ジュン、カズヤ。中の様子を」

  無言でうなずく二人。

  俺は、いつでも飛び出せるよう剣を構えた。






  中は異様な光景だった。人がモンスターを捕らえているのだ。

  「おい、これぐらいでいいんじゃねえか」

  「しかし、あのお方はうるさいからな・・。オラ!騒ぐんじゃねえ!」

  何かのマジックアイテムだろうか?次々に野生のモンスターを捕らえている。

  「実験に使うから量が多いに越したことねえんだと」

  男の一人がそう答えた。

  「住民相手にデータを取るやつだよな?」

  その言葉にユウイチ達は固まった。

  もはや疑う余地は無い。

  ただの調査が思わぬ収穫となった。  

  ユウイチ達は扉の中へと飛び込んだ。




  「動くな!!」







  その声に、中にいる全員が固まった。

  「てめえらが誰の差し金で動いているのか・・」

  ジュンが、拳を構える。
 
  「しゃべってもらいます!」

  カズヤが、剣を抜く。

  「て・・てめえらは?」

  「俺達は・・カノンだ!」

  ユウイチは長剣を振りかぶり、叫んだ。

  「カノン・・?最近活躍してるって言う、ズアイフの私兵か・・」

  「少し違うがな。俺達は協力関係にあるだけだ。
   貴様らのような犬じゃない」

  ふんと鼻を鳴らすようにジュンが答えた。

  「ぐっ・・このガキ!」

  ひゅっと腰からサーベルを抜く。

  「どのみち、このことを知られたからには生かしておくわけにはいかねえ!!」

  振りおろされるサーベル。しかし、

  ジュンは手甲でそれを受けると、腹に強力な蹴りを入れる。

  「ぐぼはあっ!!」

  たまらず後ろに吹っ飛ぶ男。

  「お、おい!大丈夫か?」
 
  駆け寄るもう一人の男。

  ユウイチ達はすでに入り口を固めている。

  逃げ場は無い。

  「あきらめな」

  ユウイチが剣を突きつける。

  「く・・」

  その時だった。

  突然あたりが、地響きにまみれた。

  「な・・なんですか?これは?」

  「地・・地震?」

  サユリとマイがたまらず尻餅をつく。

  その隙を突いて、男達が出口へと走る。
  
  「あ、待て!」
  
  カズヤの剣は、わずかに男から何かを叩き落としたにすぎなかった。

  「あ・」

  「なにぼうっとしてる!早く来い!」

  男達はさっさと逃げ出してしまった。

  「くそっ!せっかくの手がかりが・・」

  ジュンが叫ぶ。
  
  カズヤが、何気なく男から落としたものを拾う。

  「これは・・・・・?」

  気づくといつのまにか、地震はやんでいた。

  「ユウイチさん!これは・・」

  それは、家紋入りのクレストだった。

  「これは・・イクーサ家の家紋ですね」

  除きこんだサユリが答える。

  「イクーサ家?」
  
  「ええ・・確か、コールズという方が当主だったと・・」

  なるほどね・・。

  ユウイチは頭の中で整理を終わらせた。

  「つまり、一連の事件の鍵はそいつが握ってるってわけだ」

  ジュンが納得したようにうなずいた。

  「このバッジが証拠にはならないな・・。
   よし、しばらく奴の屋敷を張ろう。
   きっと尻尾を出すに違いない」

  「はい!一歩前進です」

  喜ぶ、皆を尻目に、マイは何故か奥の扉を見つめている。

  「どうしたマイ?」

  「・・・魔物の気配。それもとても強い」

  マイの言葉に俺達は、すぐに戦闘体制に入る。
  
  「い、いったいどこから・・?」

  ナユキがおろおろとあたりを見回す。

  「・・来る!!」




 

  ガカアアアァァァン!!




  奥の扉から、巨大な目玉と触手を持つ化け物が出てきた。

  ゾンビを引き連れて。

  「キャアアアアア!?」

  マイを除く女性陣は悲鳴を上げた。

  「こいつは・・?」

  ユウイチは分析を試みたが、古代の魔物なのか

  見たことの無いタイプだった。

  だが、

  「目から魔力を感じるな・・。邪眼を持つ魔物のたぐいか」

  「じゃがん?」

  ナユキが祐一の発言にオウム返しに返す。

  「目から発する魔力で、人や魔物を操ったり・・石化したりする力を持つんだ。
   やばいやつだと・・メドゥーサとかな。村一つが全滅しかかった事件もあったほどだ。
   こいつは死体を操るタイプらしいな」

  「はえ〜悪趣味ですねえ」

  「そういう問題じゃないぞ・・サユリ」

  のんきなサユリに、ジュンが突っ込む。
  
  「動きは鈍いな・・。まずは雑魚をたたむぞ!皆!散れ!!」

  いっせいに全員が、その場から散る。

  「ジュン、俺は親玉をたたく。道を作ってくれ!」

  「任せろ!!」

  いうないなや、ジュンはゾンビの群れに特攻をはじめた。

  もちろん、ゾンビはわらわらとジュンに集まりだした。

  「俺は言い寄られるなら、女性限定なんだよ!!」

  あたりまえのことを言うな。ユウイチは心で突っ込んだ。




  「炎獄破!!」




  ジュンの炎の氣光波は、次々にゾンビを飲み込んでいく。

  「・・ジュン、やる。でも、私も負けていられない」

  マイが、ゾンビを前に静かに剣を構え、そして

  「カワスミ流聖剣技・・」

  その剣が神秘な氣に包まれる。

  「聖剣・光破!!」

  巨大な白い剣閃が、ゾンビたちを飲み込むように切り裂いていく。

  少しふれただけで、塵と化していくゾンビ。

  すでに、親玉への道は出来た。

  「よっしゃ!行くぜ!!」
  
  意気込んでユウイチが飛び込んだ、その時、

  親玉の目が突然光った。その邪悪な輝きは

  一瞬のことだったが、

  「な・・あれは・・?」

  カズヤは愕然とした。
 
  消滅したはずのゾンビたちが、再び肉体を得て、

  せっかく作った道を消してしまったのだ。

  ユウイチは、敵陣の中で完全に孤立してしまった。

  「しまった・・」

  ユウイチが中心にいるため、効果の広い技や魔法は使えない。
  
  いくらこの場所が、広いとはいえゾンビを飛び越えようとすれば

  親玉の触手につかまるだろう。

  「ユウイチ・・・・・」

  ナユキが魔法を打とうとするが、どうかんがえてもユウイチを巻き込んでしまう。
  
  「まいったな・・完全なピンチだぜ・・」

  ユウイチは、徐々にゾンビたちに迫られつつある。

  「打開策は無いのか・・・・?」

  ユウイチの顔に一筋の汗が流れる。

  必死に策を講じるカノンメンバーだった。


                                     続く

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