ブレイブハート 〜奇跡は心〜   TRAVEL 22   集いし出場者達





     
    特訓を始めて6日が過ぎ、町も本格的に武術大会の雰囲気になってきた。

  よいよ大会は明日に迫っている。  

  アキコさんは当日に開く、ジャムの出張店の準備を始めている。

  もちろん単品ではなく、ジャムサンド等としてだが。

  キヤイタさんも、大会期間中は店を出張するらしい。

  しだいに、出場者達が誰なのかも町に流れたらしく

  見回りのたびに、
 
  「頑張ってください!」

  「ファンなんです!」

  と、散々声援をかけられた。

  やがて町のはずれにある、コロシアムに通じる道の前に俺とナユキはきていた。

  「こっから先がコロシアムなのか?」

  「うんそうだよ〜ナナセコロシアムだよ」

  ナユキの話によればナナセコロシアムは、時期的にリオハラ遺跡と

  ほぼ同時期に出来た建物で、やはり大会が開かれていたらしい。

  名前の由来は、当時女性ながらその名を知らしめた剣士の苗字が

  ナナセだったとか。

  「へえ・・・そんな由来があるのか」

  「うん、すごいよね〜女の子なのにね」

  まあ・・うちのメンバーにもそんなのはいるしな。








  「・・くしゅ」

  「マイ?どうしたの?」

  庭でお茶をしていたふたりだったが、マイが突然くしゃみをしたので

  サユリはマイに尋ねた。

  「・・わからない」

  「風邪とかじゃないよね?」

  コクン

  マイはうなずいた。
 
  「それならいいけど・・」
 
  知らぬが仏である。














  俺たちはいつのまにかコロシアムの前にいた。

  すでに、参加は締め切られているらしい。

  「今日で締め切りだったのか」

  俺たちはすでにエントリーを済ませている。

  「凄い数の人が来たんだね」

  入り口前には結構な人が集まっている。
  
  下見に来たらしいものも集まっているが・・・。

  「なんだろう?あの集団は」

  なにやら集まって垂れ幕のようなものを書いている。

  全員女性というのも気になる。

  「祐一は知らなくていいんだよ」

  ナユキはなにやら不機嫌になってしまった。
 
  何でだろう?深く突っ込むと起こられそうなので

  俺は気にはなったが尋ねはしなかった。

  ふと見ると、出場者が説明を聞いている中に・・
 
  女の子?

  青い髪のツインテールの少女が見えたような・・・。

  しかし、人ごみに流れあっという間にその姿は見えなくなる。

  気のせいだったかな・・・?

  「ユウイチ?そろそろ行こうよ」
 
  「ああ、そうだな」

  俺はナユキに促がされその場を後にした。

  





  「へえ・・歯ごたえのないやつばっかかと思ったけど
   骨のあるのがいそうね」

  ユウイチは気づいていなかった。

  その少女が只者ではなかったことを。

  「わざわざ足を運んだかいがあったかな」

  嬉しそうに、用意された戦いの場所を眺めている・・。

  鋭い目をした少女のことを・・・・。













  郊外のはずれの森・・・。

  「できた・・・・」

  呆然とつぶやく少年はカズヤ。

  大会も近いため、お互いに秘密で特訓をしていた。

  「これなら・・ユウイチさんやジュンさんに
   通用するかもしれない」

  カズヤは、早くその時が来ないかとわくわくしていた。












  貴族街のクゼ邸。

  「さて・・今年は大会に出場してみるか」

  どこかで、ユウイチ達が出場することを耳にしたクゼは
  
  執事に早速出場の手配をさせた。

  「ユウイチめ・・大衆の前で敗北の味を味合わせてやる・・・」

  クゼは場違いかつ、逆恨みの炎を燃やしていた。









  「一体何をどうやったらこんなに傷ができるのよ?」

  ここはミサカ診療所。ジュンは特訓の後には

  必ずここによっていた。

  「いや・・やっぱ親父の荒修行じゃないと身に入んないんだよ。
   で・・まあ、こう小さい怪我は重なると」

  ははは、と苦笑するジュン。

  「はいはい・・。よしこれで終わりよ」

  ぽんと肩をたたくカオリ。ちなみにそこは傷があるところだ。

  「ぐわっち!カオリ〜勘弁してくれよ・・」

  「これぐらいで泣きごと言わないの」

  くすくすと笑いながらカオリは部屋の窓に寄りかかる。

  「で、どうなの?自信は?」

  「何しろ、カズヤにユウイチがいるからな。ベスト3も怪しいな」

  ジュンは正直に答えた。はっきり言って少なくともこの三人の
  
  実力は伯仲だ。特に最近のカズヤの成長ぶりは凄いものがある。

  「ふ〜ん・・。意外と自信家なのかと思ったけど」
  
  「ひでえな。俺は意外と堅実派だぜ」

  心外だといわんばかりにジュンが言う。

  「まあ、あたしは治療班として行くことになってるから
   それなりの結果が出たら、それなりのごほうびがあるかもよ?」

  「なんだよそれ?」

  「言葉どおりよ」

  ジュンがよくわからんなと言って、再三問い詰めたが
 
  カオリは笑っているだけだった。























  俺はミナセ・ジャム・ファクトリー前に着いた。

  「それじゃあな、ナユキ」

  「うん、あ、そうだユウイチ」

  とことこと近づいてきて何をするかと思ったが

  「明日からの試合、ふぁいと、だよ」

  みている方が気の抜けるようなガッツポーズをした。

  だが、気持ちは伝わった。

  要は頑張れといいたいのだろう。

  「ああ、頑張るよ」

  ぐっと拳を高く上げる。

  「ちゃんと応援席にいるから」

  「ああ、お前のところに出場者をぶっ飛ばしてやる」

  「う〜そんなことしたら怒るよ」

  「冗談だ」

  いつものやりとりをしつつ俺は落ちる夕日を眺めた。

  次に日が昇ったら試合か・・・。

  ジュン、カズヤ、そしてまだ見ぬ強敵。
  
  無意識のうちに高まる昂揚。

  腕が鳴るぜ・・・・・。

  陳腐な表現だが今の俺にはそれが一番あってるような気がした。








  そして、当日を迎えた。

                                     続く

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