ブレイブハート 〜奇跡は心〜 序章
時代とは常に動くものである。
その流れに翻弄されるもの。
その流れに逆らい、生きるもの。
この話は、そんな激動の時代を生き抜く
少年達の生き様を書いた話である。
「なあ、ジュン?あの街か?」
俺は、地図を広げながら尋ねた。
「ああ、あれが大陸でも有数の国「ファグナス」だ」
ジュンは確認するようにそう答えた。
彼らは旅人だ。
生きるために旅の技を習得し、
生きることこそが旅とも言える生活。
地図を持つ少年の名はユウイチ。
若干18際ながら、その武術の腕前は達者なもので、
前の街で、盗賊団50人を相手に、かすり傷すら負わなかったほどだ。
また、普通の人間では相手をしづらい「魔物」という存在に対しても
彼は強かった。
その点に関しては、親友であるジュンも一緒だった。
二人は同門の関係であり、親友であった。
ユウイチは10歳のときに両親を亡くし
ジュンの親に引き取られ、技を学びながら
世界を旅していたのだ。
もっともその人も、3年程前に他界した。
以後、二人で旅を続けてきたのである。
しかし、そろそろ蓄えのなくなってきた二人は
補給をしようと大陸屈指の大国
ファグナスに入国しようとしていた・・・・・・。
それが始まりだった。
「あっさり通れたな・・・」
俺は、身分証明代わりにライセンスを見せ、
中央通りへの道を歩いていた。
世界共通の「トラベラーライセンス」だ。
魔法技術による加工がされており、
偽造は不可能。どこにいても自分達の
身分が証明できるのだ。
国籍不定の旅人はこれが必須になる。
「そりゃライセンスに変わる証明書はないからな」
ちなみにこれには過去の経歴なども
書き込まれている。
俺達は、「バウンティーレベル」がS級なのだ。
加えて犯罪行為が無い。
それは実力を証明したようなものだ。
「これだけの大国だから、ならず者は
入ってこれないかと思ったんだが」
ユウイチは少しふに落ちないようだ。
「この国の管理はずさんだからな。
さすがに防犯管理までは行かないが・・。
まあ門戸が広いと思えばいいだろ」
ジュンはあまり細かいことを気にしない性格だった。
「そういえばさっき門番が・・」
「キャアアアア!!」
突然、会話を打ち切るような悲鳴が当たりに広がった。
「・・最近は街中でもモンスターが出ると」
「さっそくかい」
俺達は駆け出した。
中央通りは、公園のような感じになっている。
そこには、
「ハウンドベアか。ここら辺にはよく出るらしいぜ」
ジュンがのんきに解説をする。
「おい!騎士団はなにやってるんだ?」
「どうせお役所仕事なんて・」
口々に聞こえる愚痴はこの国の惨状を物語っていた。
やっと前に出ると、何人かが倒れている。
それをかばうように、身なりのいい女性が、
魔物を前にしていた。
「ジュン」
「ああ」
俺は腰にある剣を抜く。
ジュンは手甲をはめる。
戦闘準備は整った。
「・・お前の相手は俺達だ!」
俺とジュンが左右に散る。
ハウンドベアはどちらを標的にするか一瞬迷う。
ジュンはそのスキをつく。
「はあっ!」
顔面に蹴りが入る。
よく勢いのついた蹴り上げだ。
俺はその間に彼女の元へ立ち寄る。
「大丈夫か?」
「あ・・はい〜・・」
いきなりのことで驚いたのだろう。
俺は
「心配するな。ここにいる奴らは守る。あんたも含めてな」
そう言って再び、ハウンドベアと向き合う。
ジュンは大ぶりの攻撃をステップを使い、
華麗に避ける。
ハウンドベアのバランスが崩れる。
ジュンの手に「氣」が集まる。
「氣掌!」
ジュンから氣光波が放たれる。
威力が高く直線的な攻撃のため、ジュンはけん制によく使う。
その威力によって俺のほうに向かいハウンドベアが飛んでくる。
「ユウイチ!今だ」
俺は宙に浮いたままのハウンドベアを
「剣舞・桜花!!」
乱れ斬りの技で撃墜する。
空中で霧散したハウンドベアは、
地に付くなり、消えていく。
「まあ楽勝か」
「ああ、当然だな」
にわかに騒がしくなった野次馬には目もくれず
俺達はけが人の救助を始めた。
さいわい死にいたるほどのけが人はいなかった。
一段落ついて、俺は先程の女性に話し掛けた。
「大丈夫だったか?ずいぶん無茶するな」
「あはは〜、おかげで助かりました」
ずいぶん屈託無く笑う人だと思った。
「あ、まだお互い名乗っていませんでしたね」
俺は
「ああ、俺の名はユウイチだ。あっちにいるのがジュン。
旅人だ」
「そうですか。わたしはですね・・・」
「サユリといいます」
彼女との出会いが全ての始まりだった。
続く
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