ブレイブハート 〜奇跡は心〜 TRAVEL 4 ジャムマスターと眠り姫
「というわけで俺たちは商店街を歩いている」
「誰に言ってるんですか?ユウイチさん」
サユリが尋ねると
「気にしないでくれ、ユウイチの数多い役に立たない癖の一つだ」
ジュンがさらりと流す。
まあ、概ね間違っていない。
翌日・・・ユウイチ、ジュン、サユリ、カズヤの四人は
街を歩いていた。
見回り・・・というよりはユウイチ達に街を見せたいそうだ。
ファグナスの街並みは、非常にきれいだった。
通ってきた貴族の住宅街とは比べられようも無いが。
まあ、あそこは特別だからな。
全体的にこの街は統制の取れた街並みだ。
各ブロックごとに役割が分かれている。
それぞれ、居住区、商店区、そして貴族区。
俺たちは、商店区を歩いていた。
大体の買い物はここらでそろう。
並木道があり、整った道もあり交通の便もいい。
住民の生活を考えた作りになっている。
「あそこが、服屋さんで、あっちが鍛治屋さんですね」
サユリの案内で進んでいくユウイチ達。
「あれ?サユリさん。あそこの店は?なんか繁盛してるけど・・」
「ああ、あそこはミナセ・ジャム・ファクトリーですよ。」
ミナセ・ジャム・ファクトリー・・。
何故だろう?そこはかとなく危険な響きがするのは?
「とてもおいしいジャムを売ってるんです♪」
「それはぜひ覗いてみたいな」
ジュンは乗り気だった。
「そうですね〜今ならナユキさんもいると思いますから
よってみましょうか」
四人は、ジャム屋に入ることになった。
「いらっしゃいませ〜。ジャムをどうぞ〜」
三つ編みの女性が、客をさばいている。
年齢が分からない・・・・。失礼な話だが。
「あら、サユリさん。ちょっと待ってくださいね。
今日の午前の分はもうすぐ終わりますから」
「あはは〜気になさらずに」
そう言っている間に、瞬く間にジャムは売れ
次は午後4時からの看板がドアに下げられた。
俺たちは、簡単なお茶をご馳走になりながら
自己紹介をした。
「そうですか・・。サユリさんが認めた方たちなら安心ですね。
私はアキコといいます。この街では「ジャムマスターのアキコ」で
通ってますが」
ジャムマスター・・・やっぱり危険な響きを感じるのは何故だ?
「後・・娘がいるんですけどね。ちょっとお待ちになってください」
そういってアキコさんは上に上がっていく。
「娘ってのは?」
ジュンがわくわくしながら聞く。
また悪い癖が出た、ユウイチはそう思った。
「ええナユキさんというんですが・・
ちょっと寝起きが・・」
「今じゃファグナスの眠り姫って呼ばれてるぐらいなんです」
眠り姫?なんのこっちゃ?
俺が素朴な疑問を浮かべると上から、
「だおおおおおおお〜〜〜〜!?」
・・・・・・・・・。
ある意味この世の物とは思えぬ悲鳴が上がり
「お待たせしました」
何事も無かったように戻ってくるアキコさん。
「あの・・今のは?」
「秘密です」
・・知らないほうがいいらしい。
しばらくして、長い青髪の少女が降りてくる。
「ひどいよ〜お母さん・・あのジャムは使わな・・」
彼女は俺を見て固まる。
俺・・・・何かしたか?
それともどこか変だろうか?
思い当たる節が無いんだが・・・。
「あ・・」
どたどた!
慌てて階段を駆け上がる。
う〜誰?あのかっこいい人〜〜。
あの着飾らない旅姿にジャケット、すこしワイルドな髪
澄んだ目。
う〜〜絵に描いたように素敵だよ〜〜。
うにゅ〜〜〜。
はっ!そんなこと考えてる場合じゃないんだよ!
サユリさんが隣にいたし、ライバルかも?
ここは、先手必勝じゃないと!
こうして彼女は10分後に降りてきた。
「なにしてるんだろ・・・・?」
「俺は何となく不機嫌だ」
ユウイチはわけがわからず、ジュンは不機嫌になる。
「う〜〜〜〜ん・・」
「姉さん・・痛い・・」
同じくわけわからず、不機嫌なサユリにとばっちりを食らうカズヤ。
「あ、あのお待たせしました」
ようやく彼女が下りてくる。
「ああ、初めまして」
ユウイチが頭を下げジュンともに自己紹介をする。
「ユウイチさんにジュンさんですね」
「ああ、呼び捨てで構わない」
「俺も」
二人はそう答え、
「それじゃ、私もナユキでいいよ」
「それじゃ〜四人で街を守るんだ?」
「ああ、困ったことがあったらいつでも来てくれ」
ナユキは、何故か顔を真っ赤にしながら
バフバフとクッションをたたいている。
つかみ所の無い娘だな・・・。
「それはそうと、俺は眠り姫の異名のほうが気になるんだが」
ナイスだジュン!
「あ・・えと・・・」
「この子は、9時を過ぎたあたりからすぐ眠くなるんですよ。
そして、朝は中々起きない。それで・・」
「ついた名が眠り姫か。納得」
ユウイチは満足そうにうなずいた。
「お母さん酷いよ〜〜」
「あら、本当のことでしょう?」
う〜極悪だよ〜とうつむきながら唸る。
う〜む結構可愛いな・・。
ユウイチはじっとナユキを見つめてしまった。
わっ、ユウイチ私を見てるよ?
何か変なことしたかなあ?
それとも、もうそう思われてるかな?
眠り姫のこともばれちゃったし。
あれ?でも微笑んでるよ?
うにゅにゅにゅ〜〜素敵だよ〜。
やっぱり私が可愛いとか思ってるのかな〜?
暴走した恋する乙女は止まらなかった。
「さて、それじゃそろそろ行きますか」
軽く雑談を終え、俺達は立ち上がる。
「ごちそうさまでした〜」
「いえいえ、いつでもいらしてくださいね」
手を頬に当て、優しく微笑むアキコさん。
「う〜ユウイチ。また来てね・・」
寂しそうなナユキ。
「ユウイチさん」
アキコさんに不意に名前を呼ばれ、
振り返るユウイチ。
「はい?」
「これからすこし時間がありますし、
ナユキも一緒に町を回らせてもよいですか?」
「「え?」」
ユウイチとナユキの声がハモる。
「お母さん?いいの?」
「それを聞くのはユウイチさんでしょ?」
だてに母親はやっていない。
娘のわずかな反応(あからさまだった気もするが)から
気を利かせる。
「あの・・ユウイチ?」
「ん〜〜まあいいか。人数が多いほうが楽しいし」
ユウイチは、同行を許可した。
「やった!うれしいよ〜」
何が嬉しいのかよくわからないユウイチだった。
よく分かる、ジュンとサユリは
「う〜〜〜む」
「あはは〜〜」
「二人とも痛いです・・・」
カズヤに八つ当たりをしていた。
「今度来た時は、もう一人の娘も紹介しますから」
「もう一人?」
ユウイチは尋ねた。
「うん。マコトっていう私の妹なの」
「妹がいたのか・・」
「妹か・・・」
おそらく、ジュンとユウイチで微妙に反応に差があったのに
気づいたのはアキコのみであろう。
「今は、孤児院の旅行に行ってて留守なんだ」
なるほど。まあいずれ会うこともあるだろう
「それじゃ、行ってきます〜」
「行ってらっしゃい」
四人を見送った後
「是非とも息子になって欲しいですね。
そのためにもナユキとマコトには頑張ってもらわないと」
怖い一言をつぶやいていた。
続く
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