ブレイブハート 〜奇跡は心〜   TRAVEL 5  診療所、そして初陣





     
    「それで、次はどこへ行くの?」
  
  先程同行したナユキが、次の行き先を尋ねる。


  「そうですね〜。ミサカ先生のところへ行きましょう。
  
  怪我とかもすると思いますから、ご挨拶をしておいたほうがいいかと」

  サユリが、そう答え異論の無かったメンバーは、

  ミサカ診療所へと足を進めることになった。






  その道中・・・

  「医者か・・。サユリさん、その人はどんな人なんだ?」

  ユウイチが尋ねる。

  「一家でお医者さんをやっていらっしゃるんですよ。
   長女の、カオリさんが外科医で妹のシオリさんが
   薬剤師の免許を持ってるので、ご両親の補佐をやってらっしゃいます」

  医者一家か・・・。

  どんな人なのかな?

  「・・・・女医・・・・看護婦・・」

  「う〜ジュンが怖いよ〜」

  あやしげな表情でぶつぶつつぶやくジュンを怖がるナユキ。

  はっきりいって、俺も同意見だ。

  付き合いが長いから、もう慣れてしまったが。

  「あ、つきましたよ〜」

  そこには、クラシックな建物に白の基調の病院で

  【ミサカ診療所】と書かれた看板がある。

  「さ、行きますよ〜」

  俺達は中へと入っていった。












  中は清潔感にあふれ、診療所独特の雰囲気をかもし出している。

  ドアの開いた音を聞きつけたのだろう、

  奥から、パタパタとかけてくる少女。

  「はい〜どうしました〜?」

  「あ、シオリさん〜」

  サユリが頭を下げる。

  「サユリさん、いらっしゃい。どうしました、何か薬が必要ですか?」

  「いえ、実はですね・・」





  説明中




  「はあ、そうだったんですか。それでは挨拶をしないといけませんね」

  と、シオリと呼ばれた少女はこちらに向き

  「初めまして、シオリといいます。一応、薬剤師として家族の
   手伝いをしています」

  ぺこりと頭を下げた。

  順々に挨拶をし、


  「俺の名はユウイチだ。仕事柄世話になると思う・・よろしくな」

  にこやかに挨拶を交わすユウイチ。

  「あ・・はい♪」

  その微笑みの餌食となった少女がまた一人。

  「シオリちゃん、カオリは?」

  ナユキが尋ねる。カオリというのは彼女の姉の名であろう。

  「奥にいますよ。すぐ連れてきますから」

  パタパタ遠くに引っ込み再び戻ってくる。


  「もう、シオリったらお客さんならさっさと言わなきゃダメでしょ」

  「えぅ〜ごめんなさい」

  そこにはウェーブのかかった髪を後ろに束ね
  
  白衣を着込んだ女性が立っている。

  「初めまして、この子の姉で外科医補佐担当のカオリといいます。
   よろしくね」

  微笑みながら挨拶をする。







  ズキューン!!





  ・・・今、何か変な音がしたような?

  「・・・・・」

  ジュンか?しかも他の人たちは普通にしゃべってるぞ。

  俺だけに聞こえたのか?

  「それで・そちらの方は?」

  あっけに取られ挨拶を忘れていた俺達。

  「ああ、俺の名はユウイチ」
 
  俺は軽く頭を下げる。

  「お、俺の名はジュンです。こうみえても体術とか得意で。
   あ、後は一応、バウンティーランクは「S」クラスで・・」
  
  ジュンはべらべらと自分の経歴を語りだした。

  どうしたんだコイツ?


  「へえ・・たいしたものね。でも怪我とかしたら
   無理しないで家にいらしてくださいね?」

  「は、はい!どんな怪我でも世話になります!」

  カオリはジュンの妙な勢いに飲まれてたじたじだった。
  
  なんかジュンが壊れたような・・・。

  



  「それじゃ次に行きましょうか」

  俺は他のメンバーを促がし

  病院を出ようとすると、


  「ミ、ミサカ先生!」

  息も絶え絶えの女性が飛び込んできた。

  「どうしたんですか?」

  シオリが駆け寄る。

  「商店街の・・喫茶店の前で突然モンスターが・・」

  俺とジュンが反応する。

  「状況を説明してくれ!」

  ユウイチが女性に話し掛ける。

  「どうも・・裏手から迷い込んだらしくて・・。
   下手に手を出した青年が怪我をして・・。
   そしたら暴れだしたのよ・・。」

  くっ・・すでに被害者は出ているのか。

  「カオリ、シオリ出られるか?」

  「大丈夫よ。今は父さん達がいるし」

  カオリはすでに準備を整えていた。

  「よし、俺たちも行くぞ。ナユキお前は危険だから
   ここで帰れ」

  「え?でも・・」

  「悪いが戦えない人がついて来ても足手まといだ。
   それに状況だけに、お前まで守れるかどうかは分からない・・」

  俺はすまなそうに謝る。

  正直ナユキだけをのけ者にするようで悪い気もしたが、

  そうは言ってられない。  

  「また、あのジャム屋にはいくからさ」

  「・・・・」

  ナユキは残念そうにうつむく。

  「ユウイチさん。準備できました!」

  シオリも支度が整ったらしい。

  「よし!それじゃ現場に向かうぞ!」

  バタバタと走って俺たちは病院を出た。

  その背中を見送るナユキの顔はさびしげだった。


  (・・・・・お母さん)

  
  「何をしてるのナユキ?」

  そこには何故かアキコがいた。

  「お母さん!?ど、どうして・・」

  「そんなことはいいの。それよりナユキあなたは何をしているの?」

  「・・・・・」

  「あなたは知ってるわよね?私達がどれだけ強力な力を持っているか」

  「・・・・・・」

  「進んで自ら危険に立ち向かうあの子達を見てあなたは何をしているの?」

  「・・・怖い」

  「何が?自分が?それとも危険が?」

  「・・・違うよ。みんなに怖がられるのが、だよ」

  「ではいつまでも自分のことは明かさないのね?偽ったまま友達ごっこを続けると?」

  アキコは厳しい口調で話す。

  「・・・・」

  「あなたはそれでいいの?本当の自分を理解されないままで?」

  「嫌だ・・・」

  「ならばあなたも勇気を出しなさい。恐れていては答えなど見つかりはしません。
   ましてや・・・」

  「・・・?」

  「自分の力を恐れず生きていくなんてことは決して出来ません」

  「!」

  ナユキは目をごしごしとこすると

  「わかったよ、お母さん。私行ってくるよ。心の底から笑えるようになりたいから」

  「行ってらっしゃい。でも無理しちゃダメよ」

  「大丈夫だよ。ユウイチ達もいるし」

  「そうね。あの人たちなら大丈夫ね」

  「うん!行ってきます」

  そういって、駆け出していくナユキ。

  その様子を見ながら

  「これがきっかけで・・うまくいくといいんだけど・・・。
   ユウイチさん、あの子のことを頼みますよ」

  空を見上げ
     
     
     
  
     
     「人には大きすぎるかもしれない力を持ってしまったあの子の事を・・」





  





  「くそっ!どこからはいりやがったんだ!?」

  喫茶店のマスターは、何とか客を避難させ

  モンスターの動きを見張っていた。

  モンスターは三匹。

  獰猛な性格と獣系特有のスピードで、獲物を狩る

  ヘルハウンドだ。

  すでに、何人かは重傷だったが、まだ死人は出ていない。

  しかし、自衛団がすでに、ほとんど壊滅に近いため

  囲みを突破されるのは時間の問題だった。

  そこへ、弱りきった団員に

  ヘルハウンドの一匹が襲い掛かる。


  「ガアアア!」
 
  「うわあああ!?」

  正に、その牙が彼ののど笛を噛み切ろうとした瞬間。










  「爆裂掌!!」







  彼とヘルハウンドの間に立つように現れたジュンが、

  技を放つ。



  「ギャゥウウゥゥ!」


  波状型に炸裂しながら放たれる氣は、ヘルハウンド達を

  吹き飛ばす。


  「大丈夫か?」

  ジュンは彼を安全な場所まで下げる。

  他のメンバーも到着する。

  「き・・君達は・・それにあなたはサユリ様・・」

  「ここは私達に任せて。あなた達は下がってください」

  「し・・しかし」

  サユリは、

  「民草を守るのは上に立つ我らが責務。ご心配には及びません」

  普段はボーっとした印象が強いが、彼女とて一貴族の娘。

  そのあふれでるカリスマ性はやはり、血のなせる技か。
  
  いや、彼女自身が磨き上げた人柄であろう。

  「ヘルハウンドか・・カオリ、シオリ。けが人の救助を。
   邪魔はさせない。急いで頼む!」
 
  ユウイチは剣を抜き、カオリたちに目配せする。

  「わかったわ。信頼してるわよ」

  「任せとけって!!」

  ジュンが威勢良く答える。

  「サユリさんは俺たちの援護を。カズヤ、ジュン」

  「はい〜」  

  「はい」

  「おう」



  「行くぞ!奴らを町の人たちに近づけるな!!」



  

  ユウイチ達何でも屋の初陣の火蓋は今きって落とされた。

                                     続く

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