ブレイブハート 〜奇跡は心〜 TRAVEL 25 ユウイチVSジュン
「せぃ!せぃ!はあああっ!」
俺は、コンビネーションで斬り、突き、払いの三連動作をジュンに向かって放つ。
「ほっ!はっ!ちえぃ!」
ジュンはそれを、綺麗に流す。最後の払いの際に、
「甘いぜ!」
キィン!
手甲でさばく時、剣ごと俺の重心をずらす。
俺は右方向へとバランスを崩しかけたが、何とか持ちこたえる。
「凄いですね・・・・」
観戦していた、アキコはつぶやいた。
「ええ・・ジュンさん。並みの体術使いではありませんね」
ミシオもそれにうなずく。
「あう〜、お母さん、ミシオ〜何がすごいの〜?」
はたから見てても、あまりの凄さに目を奪われてただけのマコトは
二人が何に感心したのかわからなかった。
「それはねマコト。普通刃物は素手では触れないわね」
「うん」
ミシオの丁寧な説明を聞くマコト。
「ジュンさんは、手甲をはめることで剣を防いでいるわ。
でもマコト、もし、防ぐ場所がずれたらどうなるかしら?」
「あう、手がスパっと斬れちゃうんじゃないの?」
その様子を想像したのか震えながら答えるマコト。
「そうよ。でもジュンさんはさっきから、一度も
防ぎ損ねていないのよ。つまり・・」
「ジュンには相当の動体視力と反射神経があるのね」
ルミはそうつぶやいた。
「僕もきづきませんでした・・。そういえば、ジュンさんは
今までの戦いでも、相手の攻撃を防ぎ損ねたことはない・・」
カズヤは今までを振り返ったが、確かにジュンの防御は完璧だった。
「両腕を盾として使うこともでき、リーチの不利さを無くして戦える。
それが・・・」
「ジュンさんの凄いところなのよ。わかったマコト?」
「うん!」
マコトは元気よく返事し、また試合に見入る。
「あはは〜ユウイチさん負けてはだめですよ〜」
周りでは、
「ジュン君!頑張って!」
実に華やかな
「ユウイチ〜頑張れ〜」
応援が
「・・ユウイチ、頑張って」
繰り広げられていた。
「あらあら、ユウイチさん人気者ね」
アキコだけがいつもどおりだった。
足元にはすでに空になった箱が置いてある。
近くには
「出張ジャムは完売しました」
とかかれた紙が張ってあった。
(相変らず、バカ力と巧みな防御センス・・)
俺は心の中で舌打ちをする。
ジュンは体術の中でも極みと言われる
「無刀取り」の技を極めている。
あいつにとって、相手の武器はなんら判断材料にならない。
常にマイペースで戦いを展開できる。
それがあいつの強さの一つ・・・。
「まあ、負ける気ないんだけどな」
俺はさっと剣を構えなおす。
防御に隠れて、すでに何発かもらっている。
地味にダメージはたまっている。
「お互い様だ」
再び、拳を構えステップを始めるジュン。
「行くぜ!!」
俺は、剣を水平に薙ぎ払い氣を放つ!!
「剣氣・巻旋風(まきつむじ)!!」
ゴウッ!!
剣圧の衝撃波に加え、大量の真空波と化した氣がジュンを襲う。
「おっと!!」
ジュンがすかさず、反撃する。
「爆裂掌・震!!」
舞台の石を巻き上げながら、ジュンの氣が俺の氣と真っ向からぶつかる。
巻き上げられた石は刻まれ、その勢いに徐々に氣のスピードはゆるまり、
そして、消えた。
「おい!舞台に人がいないぞ!」
観戦席からそんな声が聞こえた。当然だ、俺たちは・・
すでに空中にいるのだから。
「てやあ!」
「はあっ!」
ギィン!カキン!
空中で猛襲を繰り広げる俺たち。
しかし、全身凶器のジュンの方が若干有利だった。
「双墜斬!!」
俺は切り上げの斬撃を放つ!
しかし、
フオン!
はずした!?
ジュンは待っていたかのように空を舞い、俺の一撃をかわす。
「残念だったな!落ちろ!ユウイチ!」
両腕を組んで、がら空きになった俺の頭を叩きつけ
地面へ向かって落とす。
何とか回転しながら受身を取ったがやはり、ダメージは否めない。
「ぐあっ!!」
ジュンはゆっくりと降りてきた。
くそっ・・これほど腕を上げてたのか。
「さあ・・どうする?ユウイチ」
口調は油断めいたようなものだったが、油断など微塵もしてないのは
見ればわかる。
仕方ない・・・。取って置きの技の一つをコイツで試すか。
「行くぜ・・ジュン」
空気が変わる。ジュンも何かを繰り出そうとしている俺に気づき
「ちっ・・。出し惜しみは無理か」
ジュンの構えがまた変わる。場に電気でも流れたかのような
緊張が走る。
辺りまで静かになる。
かなり長い静寂。
一体何分たったのか。
しかし、開始の合図はそれとなく訪れた。
カツン・・・・。
崩れた舞台の石の音。
バッ!バッ!
二人が同時に動く。
あいつの狙いはおそらく
「リノーバス流双技連携!!」
ジュンの叫びが辺りに響く。
「炎砕双爆蹴!!」
炎の氣の乗った強力な回し蹴りが、放たれる!
俺はそれを剣で流す。
次は二撃目が・・・。
なっ!?しまった!
ジュンはそのまま、勢いを利用して回転するとそのまま、掌打を繰り出す!
これは・・爆砕炎!?
「これで、終わりだ!ユウイチ!!」
そうか・・砕牙蹴の後に、爆砕炎をつないだ技か。
だが、この炎は俺にとっちゃ好都合!
俺は真っ向から炎に飛び込み、
剣に込めた氣を変化させる!
「断ち切れ!雷の剣!」
俺の剣が電撃をまとっていく。
「雷破閃!!」
高速で振るわれた剣が、炎を切り裂き目の前にいたジュンに電撃の一撃を見舞う。
「ぐあああああ!!」
俺の剣がクリーンヒットし、宙に舞うジュン。
俺は肩ひざをついた。さすがにあれだけの氣を連続で放つのはきつい。
ドガアッ!!
ジュンが受身を取れずに着地する。
「・・・くっ」
ジュンが体を動かそうとするが
「だめだな。俺の負けだ」
その言葉を聞き、一体どこにいたのか審判が
「勝者!ユウイチ!!」
その言葉に歓声と拍手が沸き起こる。
「凄いぞ!ユウイチ!」
「ジュンもよくやったぞ!!」
「ユウイチさん、素敵〜」
俺たちに賞賛が浴びせられる。
「立てるか?」
俺はジュンに聞いた。
「無理」
仕方ない。俺はジュンに肩を貸して舞台を下りた。
入れ替わりに、カズヤとルミが来る。
「カズヤ、どれだけ腕を上げたか見せてもらうぞ」
「はい!」
ルミは俺に向くと
「情熱一刀派・乙女流・・。その剣とくと見るといいわ」
そう俺にしか聞こえないような声で言った。
「乙女流・・・?」
聞いたことがあるような気がするが思い出せない。
そうこうして、ジュンを控え室に下ろすと
カズヤとルミが礼をしている。
よいよか・・・。
「始め!!」
審判の声が響き渡り、準決勝第2試合が始まった。
続く
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