ブレイブハート 〜奇跡は心〜   TRAVEL 9  第一の事件





     
     「お〜〜、結構凄いな・・」
  
  ジュンが入るなりそう言った、

  個人の机から、談話用のテーブル。
 
  それにお茶道具までそろってる。

  正に至れり尽せりだ。

  「奥には、訓練用のスペースや、仮眠室までありましたよ」

  その気になれば泊まり込みも可ですか。

  「問題はナユキだな・・」

  ユウイチはナユキを見てそう言った。

  「え?どうして?」

  ユウイチは朝のことを告げた。


  




  女性人全員、総がかりでも起きないナユキ。

  眠り姫の名は伊達ではなかった。

  そこで結局、

  「アキコさん」

  「了承」

  そして響き渡る断末魔の悲鳴

  


  「だおおおおお〜〜〜〜〜〜」





  以上、回想終わり。






  「だったんだぞ・・」

  あきれたように言うユウイチに

  「う〜だってわたし朝弱いんだよ・・」
 
  ナユキはそう言って反論するが、

  「それじゃ、どうやって朝の集合時間に間に合わせる気だ?
   ここからなら、およそ20分はかかるぞ」

  う〜とナユキは唸っていたが、

  「ユウイチが起こしに」

  「却下」

  1秒で即答した。

  「う〜酷いよ〜ユウイチ〜極悪人だよ〜」

  う〜う〜言いながらユウイチに駄々をこねるナユキ。

  「アキコさんにでも頼んでおくよ」

  ユウイチはそう言って

  「さ、それじゃ仕事の打ち合わせをするぞ」

  






  「見回りの時間帯はこんなもんで・・組みは、
   事務所待機に二人・・ここから西回りが一組
   東回りが一組・・それでいいか?」

  ユウイチが地図を広げながら確認する。


  「問題ないですよ〜組み合わせはどうするんですか?」

  「その日ごとにくじ引きででも決めればいいんじゃないか?」

  何気なく言った一言だったが、

  この時、すさまじいまでに目が光った二人の少女がいたことに気づいたのは

  マイとジュンだけだった。

  (あはは〜ユウイチさんと組みになりますよ〜)

  (ユウイチと組みになって住民公認の仲になるんだお〜)

  燃えていた。それは、もう背景に炎が映るほど、

  (・・サユリが燃えている)

  (ナユキって結構突っ走るタイプなんだな・・)

  冷静にその場を見守るジュンとマイだった。

  「あ、そうだ。皆さんこれを持ってください」

  サユリさんが出したのは青い宝石のような石だった。

  「これは心通石といって、これを持ってる人同士なら、
   離れていても心の中で会話できると言う魔法石なんです」

  そういって全員に一つづつ配る。

  「希少なものですから、無くしたりしないでくださいね〜」

  これなら、連絡を取るのに楽だな。

  準備が整ったところでユウイチが、  

  「おし、出来たぞ。それじゃ引いてくれ」

  そうして出来た組み合わせは・・・・・。











  「・・サユリと一緒」

  「あはは〜そうですね〜」

  留守番組はサユリとマイ。

  しかし、親友でよかったと安心する裏腹

  (ユウイチさんとは明日ですね・・・・)

  少し残念だった。






  「う〜ユウイチと一緒がよかったよ・・」

  「俺にそんなことを言われてもな・・」

  ジュンは半分八つ当たりのような状態で、

  ナユキの愚痴を聞いていた。

  「まあいいよ。ジュン君にユウイチの事いろいろ教えてもらうから」

  「ああ、いいぞ」

  二人は、西ルート見回り組みだった。









  「なんだか、わくわくしませんか?ユウイチさん」
  
  「そうだな」

  東ルートは、ユウイチとカズヤだった。

  「そうそう事件も起こらないと・・」

  ガシャーン!

  



  「助けてくれ〜!」







  「起こりましたね・・」

  「・・・・行くぞ」

  ユウイチとカズヤは、悲鳴の聞こえた
  現場に向かった。








  現場は酒場だった。
  
  「ったく・・よわっちいくせにけんか売るんじゃねえよ・・」
  槍を構えた、ユウイチ達と同い年くらいの少年がそう言った。

  「一体何が・・!」
  ユウイチはその少年を見て愕然とした。

  そう、ユウイチは彼を知っていた。

  「サイトウ・・・お前が何故ここに?」

  「ああ?・・へえユウイチじゃないか。久しぶりだな」

  好戦的な目つきでユウイチを見るサイトウ。

  「ユウイチさん・・彼は?」

  「彼の名はサイトウ。神速の槍使いで、彼の持つ槍は
   次元神オネの加護を受けた「魔槍エターナル」。
   あの黒い槍とそのスピードから、「黒風のサイトウ」
   という、通り名がついたほどの使い手だ」

  「ご説明どうもっと・・。で?お前はここで何をしてる?」

  サイトウは、食って掛かるようにそう言った。

  「・・まあ、便利屋ってとこだ。もっともお前のような
   市民に危害を加えるものを掃除する仕事も請け負ってるがな」

  ユウイチは剣に手をかける。

  「酔っ払い相手とはいえ、これはやりすぎだ。
   おとなしく自衛団の事務所まで行け」

  サイトウは槍を手にし

  「断ると言ったら?」

  二人の間に沈黙が走る。

  「店の人に迷惑がかかる・・表に出ろ」

  「上等だ」

  二人は外へ向かう。

  「カズヤ」
 
  「はい」

  「皆に連絡を」

  「わかりました」

  ユウイチは酒場の主人に

  「あいつは俺が抑えますから、今のうちにけが人を早く」

  「は、はい!あの・・お気をつけて」

  ユウイチはうなずいて外へ向かった。





  酒場の前の通りは、野次馬がいたが、

  「巻き添えをくらうと危ない。離れてください」

  ユウイチは、周りの人を離れさせた。

  「相変らず、甘いよなお前は」

  サイトウは皮肉ぎみに笑う。

  「・・性分だ」

  ユウイチは黙って剣を抜いた。

  「ふん・・・」

  サイトウは、槍の穂先の包みを取る。

  静けさの漂う広い道で、二人はお互いの武器を構えた

                                    続く

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