ブレイブハート 〜奇跡は心〜   TRAVEL 50  奇跡は心





    

    「ぐおおおお!」

  ホロズオープはその魔力を中心に俺たちに攻撃を仕掛けてくる。

  だがナユキとサユリさんの魔法がそれを的確に防ぐ。

  「ナユキさん! 右をお願いします!」

  「うん! 了解だよ!」

  もともと魔力の高い者が二人でシールドを張るのだから防御力は極めて高い。

  俺たちはその壁を利用しながら四方から攻撃を仕掛ける。

  「喰らえ! 拳聖奥義!」

  ジュンの拳が輝きに包まれる。

  「秘拳・天星!」

  その一撃は星をも砕く天の一撃。

  「がああ!!」

  ホロズオープはその場にうずくまる。

  そこへカズヤが飛び込んでくる。

  「いろんな人の出会いから掴んだ僕の剣」
  
  一番の成長をしたのはあいつだ。

  時にその剣の鋭さに身震いすらしたのだから。

  「喰らえ! クラタ流我流奥義!」

  「エッジ・バーストリング!!」

  すり抜けるかのようにカズヤの剣はホロズオープをつきぬけた。

  そして氣の爆発。

  あんな芸当は俺でも無理だ。

  そう思っていると影が差す。
 
  月を背後に剣を構えて天を舞う。

  マイの剣にまるで月の光が集まっているようだ。

  「…これからも、私は剣と共に歩く」

  「カワスミ流最終奥義」

  「聖剣・月光」

  シャン!

  まるで三日月のごとき輝く剣閃がホロズオープを貫いた。

  「ぎゃあああ!!」

  ぼろぼろだ。

  お互い様だがな。

  「見てみろホロズオープ」

  俺は奴に聖剣をかざした。
 
  もはや直視するのも厳しいほどに輝きを持っている。

  「この輝きはこの国の人たちの心の輝きだよ」

  ホロズオープが忌々しげにその剣を見つめる。

  「奇跡は心だ。それを望み立ち向かおうと生きる人たちがいる限り」

  そして走り出す。

  奴も向かってくる。

  お互いに最後の死力を尽くすため。

  「俺たちで奇跡を掴む!!」

  「私は人間に絶望をもたらす!!」

  後数メートル

  「消えるがいい全ての命よ。我のもたらす闇に包まれ!」

  「リノーバス流剣聖奥義! 極みの太刀」

  そして接触する。
 
  「ブラック・ファイナリティア!!」

  「天光日輪!!」

  ズガアアアア!!

  あたりを衝撃と光が包む。

  「ユウイチーー!!」

  ナユキの声がかすかに聞こえた。


















  気がつくと俺は立っていた。

  聖剣の輝きはやんでいる。

  後ろを見ると今にも消滅しそうなホロズオープがいた。

  「これが……人間の……力か?」

  「あきらめずに希望を信じて立ち向かう人間の力、だ」

  俺は一歩づつ近づいていく。

  「じゃあな、絶望の魔王」

  ザン!

  一太刀を奴に叩き込む。

  「ギャアアアアア!!」

  光があたりに立ち込め黒い粒となり魔王は消滅した。




















  「やれやれまたしても崩壊する建物から脱出とはな」
 
  ジュンが本当に疲れたといわんばかりにぼやいた。

  「あ、みなさん見てください!」

  サユリさんの指す方向から朝日が見える。

  「守ったな」

  ジュンがそう言った。

  「ああ、みんなの力でな」

  俺がそう締めくくると、

  「あはははは!」

  皆で声を上げて笑いあった。

  今、ここに皆がいること。

  守り抜いた国。

  その全てが嬉しかった。

  「さあ! 帰ろうぜ」

  ジュンが手を掲げてそう言った。

  「よし! それじゃ一番乗りだ!」

  俺はいち早く走り出した。

  「あ、ユウイチさんずるいですよ〜」
 
  サユリさんが、

  「待ってくださいよ!」

  カズヤが、

  「ちっ! 先を越されたぜ」

  ジュンが、

  「…ずるはよくない」

  マイが、

  「ユウイチ、待ってよ〜」

  そしてナユキが、

  皆が後を追いかけてくる。

  さあ、胸を張って帰ろう。

  もう危機は去った。

  皆で掴んだこの奇跡を喜ぶために。

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