ブレイブハート 〜奇跡は心〜 TRAVEL 23 開幕!武術大会!!
ナナセコロシアム武舞台・・・・。
並み居る出場者達が並び、開幕前より国王からの挨拶が始まった。
ファグナス国王ベイラグス・ムズ・ファグナス。
人格者で知られ、人の上にたつ器の王。
しかし、王制の統制国家ではないため、近年の一部の権力者による
横暴には頭を悩ませているのだった。
しかし、今日はそのようなことはおくびにも出さず
国民達が楽しめるようにと簡単な挨拶を済ませ王族の観覧席へと戻っていった。
「あの方がこの国の王か・・・」
俺は誰にも聞こえないようつぶやいた。
周りはすでに百人ぐらいの出場者だらけだ。
うかつなことは言えない。
「それでは、出場者の方は別館の方にて予選を行います!」
案内が始まり、俺たちはそちらの方へと移動することにした。
予選の形式は3分間のバトル。
その間に、相手を制すかまたは、審判の評価による簡単な試合だった。
俺とジュンとカズヤはとりあえず予選でぶつかることはないようだ。
あいつらと3分だなんてもったいないことは出来ない。
結局、俺たち3人はあっという間に本戦出場を果たした。
本戦には8人が出場する。準決勝第2試合までは今日行われる。
俺たちはとりあえず予選通過の報告をするため
応援席へと向かった。
「あ、ユウイチ〜こっちだよ〜」
ナユキがそれはもう目立つほどに手を振っている。
「お疲れ様です皆さん。それでどうでした?」
頬に手をやるポーズでアキコさんが尋ねてくる。
「とりあえず、全員予選は通過しました」
カズヤが報告する。
「あはは〜おめでとうございます」
サユリさんが賛辞を述べる。
他の皆も次々に言葉をつなぐ。
「とりあえず、ここで次の本戦の組み合わせの発表が行われるから
待っててとさ」
ジュンが言うと
「それじゃ、今のうちにお弁当を食べてしまいましょう」
シオリがそう言うと、皆が次々に弁当を広げる。
観戦しやすいよう広めのスペースを壇上に並べたコロシアムが
一転してピクニック広場のようになってしまった。
まあいいか。
「うん、おいしいよ。やっぱりシオリさん料理が上手だね」
カズヤが満面の笑顔でそう誉めると
「えへへ、嬉しいです。カズヤさん、いっぱい食べて頑張ってください」
何かほほえましい光景だな。
「ジュン、どんなに頑張るのはいいけど無理だけはしないでよ」
「ああ、任せとけ」
「治療する方が大変だからね」
「おい・・そりゃないだろう」
「冗談よ」
ふっ・・ジュン。手玉に取られているうちはまだまだだぞ。
とかいいつつ俺は、ナユキ、サユリさん、アキコさんの弁当を交互につまむ。
うーむ、どれも勝るとも劣らない味だ。
「やっぱ皆料理上手いよな。これだけの料理は早々食えないぜ」
俺が素直にそう言った。
「ユウイチさんに喜んでいただけてよかったです〜」
「・・サユリ、良かった」
「ユウイチ、ありがとう」
「あらあら、おだててもなにもでませんよ」
三者三様の反応だった。
「ユウイチさん、遅れました」
声が後ろから聞こえ、ミシオがアユとマコトを連れてきた。
「おう、三人とも遅かったな」
「ええ、少し用事がありまして。アユさんは迷ってらしたので連れてきました」
「うぐぅ・・だってここって広いんだもん」
なるほど、キヤイタさんがアユを手伝わせない理由がわかった気がした。
「あう〜お腹ぺこぺこ・・」
「まだお弁当はありますよ」
アキコさんが座るよう促がし、全員そろって昼食を取るひとときだった。
やがて、程よく腹もふく運営者が舞台に上がる。
「皆様!ただいまより本戦の組み合わせを発表いたします!
名前を呼ばれた方はその場でご起立願います!!」
あたりがシーンとなる。
「第1試合!前回準優勝を成し遂げた剛力の斧使い!
マシラ!」
向こう側のほうにやたらとでかい男が立ち上がり、取り巻きの人間が
ワーッと声を上げる。
確かに強そうだな。
「対戦相手は、最近結成された遊撃団カノンのリーダー!その目覚しい活躍に
街で知らぬ人はいないほどの有名人!ユウイチ!!」
俺は慌てて立ち上がる。
周りからどっと声援が挙がる。
「待ってました!」
「ユウイチさ〜ん!頑張って〜!」
「期待してるぜ!兄ちゃん!!」
ほとんど全員から声援もらってないか?
何気に垂れ幕とかまであるし。
かなり恥ずかしいんだが・・・。
「凄い・・ユウイチ有名人だよ」
ナユキが的外れなことを言う。
一緒にいるお前だってそうだろうが・・・。
「続いて!第2試合!その二刀のナイフと素早い動きで
相手を倒してきたナイフ使い!マウス!」
やがて、切れ長の目をした男が立ち上がりやや周りで声援が上がる。
「そして、同じくカノンメンバーにして体術使いのジュン!!」
ジュンが立ち上がると、俺と同じくらいの声援が再び上がる。
「キャア!見て!ジュンさんよ!」
「頑張ってください〜!」
中には黄色い声援もあるが。
「ふ〜ん・・・・」
カオリが意味深なことを言う。
「どうしたの?カオリ」
「な、なんでもないわよ」
ナユキにそう聞かれて慌てて繕うような表情を作るカオリ。
何かあったのかな?
もし順当に上がれば準決勝はジュンか・・。
「第3試合!名家クゼ家の嫡男にして、騎士団長を勤める
マサキ様!」
クゼ・・あいつの名前マサキだったのか。
応援席のやや端のほうにあいつの姿が見えた。
まあ・・取り巻きの声援はあるほうか。
「対戦相手は、やはり名家のクラタ家の嫡男!カノンに神速の少年剣士ありと
うたわれる、カズヤ様!」
りりしい顔で堂々と立ち上がるカズヤ。
声援の数は俺たちと同等だ。
ただ・・女性の声援が上がるたびに
「えう〜・・えう〜・」
と、シオリが唸っていた。
けん制・・・のつもりだろうか?
「そして第4試合!前大会優勝者の疾風の剣士!ラフイ!」
やがて、立ち上がった男のほうを見ると長身の剣士がそこにいた。
できるな・・。こんな場所でも油断していない隙のない身のこなし。
「対戦相手は、本大会の紅一点!しかし、外見とは裏腹に予選では一撃で
相手を叩き伏せた女性剣士!ルミ!」
すぐ後ろの方で、ツインテールの青髪の少女が立ち上がる。
わあああああ!と、男供の歓声が上がる。
ふと彼女と目が合った。
どこまでも純粋に強くなろうとする目だ。
強い・・・。おそらく他の出場者とはけた違いに。
そして、俺は気づいていた。
彼女の目が、
『あんたと当たるのが楽しみね・・・』
その目はこういっていた。
俺は怯みもせずこう答えた。
『望むところだ・・・』
そして、カードは決まった。
後は全力でぶつかるのみ!
続く
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