ブレイブハート 〜奇跡は心〜   TRAVEL 36  離反





     
    
  俺たちは、どうにか国王の間までたどり着いた。

  ここまで来たら慎重になる必要はない。

  俺はゆっくりと扉を開け放つ。

  ゴゴゴゴゴゴ・・・。

  鉄ごしらえに豪華な装飾の扉がゆっくりと開く。

  先ほど顔を見た男、フォルンケスがそこにはいた。

  「ほほう・・君達はカノンだったな?
   あのモンスター達を葬りながらここまで来るとは・・いややるではないか」

  俺たちを前にしてもフォルンケスは余裕の表情を崩さない。

  「おや?アカネ王女ではありませんか。弱腰の父王に代わり
   私を討ちに来たのですか?」

  「父を侮辱しないでください」

  穏やかだったが、明らかに怒りのこもった口調でアカネは答えた。

  「ふっ・・民衆を統治せず議員制等と他人任せの政治を行う国王など弱腰ではないですかな? 
   国とは元来、一人の頂上に立つものが治め、下の意見など聞く必要はない。
   そんなものを放置すればいつまでも意見がまとまるわけはない。
   そして国は乱れる」

  フォルンケスはあまりに身勝手な論理を語り始める。

  俺は頭にきて反論した。

  「ふざけるな!お前の言ってるのは単なる独裁だ!」

  「そうだな。だが一番国が安定するやり方だと思わんか?
   単純に一人の思考に従い、全員が反論することなく動く。
   実に簡単だ。ただ私の言うことを行えばいい」

  本気でそう思ってるのか?

  「どうです?アカネ王女。あなたからも父王を説得なさっては?」

  「嫌です」

  アカネは即答した。

  「国とは・・たった一人の頂点が支えているのではありません。
   下に広がる民衆こそが国という大きな建物の土台なのです。
   それを無視して国を統治など出来はしません。
   必ず・・破滅するでしょう」

  「ふっ・・それは民衆を押さえつけるからであろう?
   従いたくなるようにすればいい。誰も押さえつけられていると思わなければ
   国が壊れるようなことはない」

  フォルンケスはなおも自身の意見を覆そうとはしない。

  「どうやら話し合いは無駄のようだな」

  ジュンが構える。

  「こんな人にこの国を任せられないよ」

  ナユキも印を組む。

  「あんたがどう思うと勝手だが・・・俺はそんなものを統治だなどとは認めない」

  「同感です。国民のためにあなたの所業無視するわけには行きません」

  アカネが1歩前に出て、俺は剣を構え、
 
  「あんたのやろうとしていることは統治ではなく支配だ!!」

  即座にフォルンケスとの間合いを詰める。

  しかし、突然現れた壁に剣撃は阻まれた。

  ギイン!

  「くっ・・・こいつは・・?」

  石の巨人・・ゴーレムか!?

  「残念だが時間だ。そいつを倒せたらテラスから北入り口のほうを見たまえ。
   面白いものが見えるだろう・・くっくっく・・」

  そういい残すとフォルンケスは姿を消した。

  「待て!!」

  『言い忘れたが・・今ごろ国王の方に差し向けた刺客が到達する頃だ・・・』

  ちっ!やはり俺たちの動向は抑えられていたか・・・。

  「ユウイチ!来るよ!」

  ズシンズシンと鈍い足音を立てゴーレムがこちらに向かってくる。

  「足止めには最適のモンスターだからな・・」

  俺はげんなりしながら相手に向かい合った。

























  「せいっ!!」

  国王とズアイフを後ろにかばいながらカズヤ達は善戦していた。

  もともと広い部屋だったため3人でもガードするには最適だった。

  しかし、すでにドアは破られているためモンスターたちが次から次へと

  押し寄せてきていた。

  「・・数だけは多い」

  ガーディスを横薙ぎに払い、マイはぽつりとそう言った。

  「そうですね。さすがにこれだけいると・・」

  持久戦はつらいですね。

  サユリはそう思った。

  「やっ!」

  グロウザーを構え、部屋の中にいる最後のモンスターを切ったカズヤ。

  「一応一区切りつきましたね・・・」

  ふうとカズヤは息をつく。

  しかし三人とも息が上がったわけではなかった。

  持久力は格段に上がっているらしい。

  「・・・・!」

  マイが即座に臨戦体制をとる。

  「邪悪な気配!!」

  カズヤもそれにならう。

  入り口からカタールをつけた男が入ってきた。

  「ふしゃあああ・・・」

  目がうつろでおよそ生気の宿った目とは思えない。

  だが、何かの術にかかっているわけでもないようだ。

  「しゃあああ!!」

  奇声を上げながらカズヤ達を無視し、後ろの二人に襲い掛かる男。

  「させるか!!」

  「・・!」

  マイとカズヤの剣がクロスし男の進路をさえぎる。

  「ひゃあ!!」

  男は一旦下がると突然下を向き苦しみ始めた。

  「ふ・・・ひゃはあ・・」

  「・・なんだ?」

  カズヤは相手の様子を油断なくうかがっている。

  突然、男の背中から皮膚がはがれ中から異形の肩が出来上がる。

  「・・・!」

  サユリはその様子に息を飲む。

  次々に変形し今、目の前には異形の人型だけが存在している。

  手にはめていたカタールすらも自らの腕の一部となっている。

  「人と・・モンスターの融合」

  カズヤはそう結論づけた。

  コールズの研究とはこれだったのだろうか?

  そしてそれを奪ったのはフォルンケスだったのか?

  それを裏付けるものは何もなかった。

  ただいえることはこれが人のやることとは思えなかった。

  「・・許せない。人の命をおもちゃにして」

  マイが普段はあまり表に出ない感情を剥き出しにしていた。

  「・・こんなことを許すわけには行かない」

  マイがすっと剣を下向きに構える。

  「そうですね。マイ姉さん」

  カズヤも隣りに来る。

  「マイ、私も手伝いますよ」

  そしてその反対の隣りに立つ。

  「・・うん」

  今頼りになる仲間と共に、

  カワスミ流聖剣技が唸る!

                                  続く

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