ブレイブハート 〜奇跡は心〜 TRAVEL 6 獣は待たず
「はああぁぁ!!」
カズヤがやや大ぶりで剣を振る。
しかし、ヘルハウンドはそれをひらりとかわすと、
牙でカズヤを襲った。
「うわっ!?」
反射的に避けるが、それでも少し腕をかすめたらしく、
カズヤの二の腕からは、血が滴っていた。
「グルルル・・・」
血の味に興奮するヘルハウンド。
実戦経験の無いカズヤにとって、
狩りを本能で行う、獣系のモンスターの相手はやや分が悪かった。
「せぃっ!」
その様子をみていたジュンは、
「苦戦してるなカズヤ。モンスターの性質を理解しないと
うまく立ち向かえんぞ」
やや、モンスターをけん制しつつカズヤと話す。
「はあ・・でもどうすれば?」
「そうだな・・奴らは所詮獣だ。人と違い、「待ち」の戦闘はしない。
常に攻めてくる。だから・・」
よく見ていろと告げ、ジュンが一匹に攻撃を仕掛ける。
軽めで動きの少ない蹴りだ。
それを避けると、スキが出来たと思い特攻してくるヘルハウンド。
だが、それを見越したジュンが、
「せやああ!」
カウンターで、回し蹴りを顔先にヒットさせる。
たまらずのけぞるモンスター。
「こういうことさ。ようは頭を使えってこと」
カズヤはしばしぼうっとしていたが
やがて、はっとしたように
「はい!わかりました!」
もう一匹に向かっていく。
(・・フェイントだ。僕の剣は速さで攻める。となると・・)
避けられる一手の後、素早く対応できる技・・・。
・・突きか!
カズヤは、頭の中では考えていたが、実際の相手を目の前にしては
理解したことを本能で行ったというべき、動きをとった。
「はあっ!」
カズヤが真正面に突きを繰り出す。当然、それを横に避けるヘルハウンド。
そして、その動きをカズヤは見逃さなかった。
右、そして飛び掛ってくるモンスター。
その動きを見る前に、反応し、
そして放つ。
「クラタ流古流剣術・・・」
「ソニックエッジ!!」
フォン!
風を切るような音ともに、すさまじい速さでカズヤの斬撃が放たれる。
次の瞬間には
ドサッ・・・。
真っ二つに切り裂かれたヘルハウンドが地面に落ち
そして消えていく・・。
「やった・・・」
カズヤはしばし、自分の成した事とその目の前の現実に
呆然としていた。
「やるな・・カズヤの奴」
ユウイチはその様子をしっかりと見ていた。
「これは鍛えがいがあるな」
ユウイチは、サユリの魔法援護にて一匹のヘルハウンドを相手にしていた。
「それにしても・・やっぱりコイツおかしい」
普段のユウイチなら、サユリを普通カズヤにつけたろうが
今回は状況が違った。この一匹だけは明らかに動きが違う。
的確な攻撃に、こちらを惑わす動き。
とても獣の動きとは思えなかった。
「サユリさん!瞬発力を上げる魔法は無いか?」
ユウイチは襲い掛かる魔物を何とか剣で、間を保ちつつ
サユリに聞く。
「わかりました。ちょっと待ってください」
サユリは、両手を組み祈るように呪文を唱え始めた。
「偉大なる陽の四元素を司る精霊の一人に我、問い掛けます」
「我との盟約の元に、その力、我に示せ!」
「風の精霊シルフよ!今一度、我が戦友に、疾風のごとき速さを与えん!!」
「フット・エア!」
サユリから、かけられた魔法によりユウイチは、
自身の体が、そして足からみなぎる力を感じていた。
「これならいける!」
ユウイチは、その素早さで一瞬にしてヘルハウンドの後ろを取る。
とっさのことに反応できなかったヘルハウンドは、一瞬、その動きを止めた。
ユウイチにとって動きの止まった獲物は、格好の的だった。
「くらえぇぇぇ!!」
瞬間、ユウイチの剣に、氣が集約する。
「剣舞・乱風(みだれかぜ)!!」
氣の集約した剣で、相手に反撃を与えないように連撃を放つ。
そして、最後のフィニッシュには、
「うらああぁぁ!」
剣からすさまじい風が吹き荒れた。
風をまとった剣で放たれた一撃。
並みの魔物なら、これでカタがついたろう。
だが、
「ふうぅぅ・・まさか人間にこれだけの力を持つ奴がいるとは・・」
ヘルハウンドは人型になっていた。獣人というべきか。
「せっかくいただいた力で、大いに人間を狩ってやろうと思ったんだけどよ・・」
フオン!
モンスターの腕が振るわれ、その爪によって
胸のあたりを切り裂かれたユウイチは、
「うわああぁぁっ!」
軽く後方に飛ばされた。
「さて・・暴れたりんな・・まずは貴様らから」
モンスターの言葉は、続かなかった。
「古代の魔印より紡ぎだされし炎よ・・・邪悪なる者に」
聖炎の裁きを与えん!!」
「ルーン・オブ・マジック」
「セイントフレイム!!」
白く輝く炎が、奴を包み込んだからだ。
「ぐおおおおおお!?」
俺たちは一瞬何が起こったのか分からなかった。
「ユウイチ!今だよ!」
その声は・・・・。
「ナユキ!?」
「いいから、早く!」
俺は、何とか体を起き上がらせ、
奴に向かっていった。
「あああああああ!!」
渾身の力を込め、奴を腹から真っ二つにぶった切る!
「グギャアアアア!」
そのまま、炎に包まれ消えていく・・・・・・。
俺たちはその光景を何となく見つめていた・・・・。
数時間後、クラタ邸。
事態の収拾を終え、俺たちはリビングに集まっていた。
ナユキのこともあったため、アキコさんにも同席してもらった。
「それじゃ・・すみませんが説明していただけますか?」
俺が口火を切ると、アキコさんは、
「ナユキは・・・・古代魔法を使えるほどの魔力の持ち主なんです」
それは、俺たちにとってもナユキにとっても重い言葉だった。
続く
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