ブレイブハート 〜奇跡は心〜 TRAVEL 41 王都決戦 〜突撃〜
モンスターとファグナス軍の雄たけびが重なる。
とはいえ所詮戦闘力の差はたかが知れている。
数だけはそろえたとはいえ、いずれどこからか崩れるだろう。
と、西側担当のケヴィルは考えていた。
しかしそれが甘い考えだというのはすぐに気が付くところとなる。
レイジスの魔道軍は極めて攻撃力が高い。
彼らの援護射撃を受けながら統率の取れた騎士達の戦いはまさに
モンスターたちを圧倒したのである。
その中心にはユキト、アカネ、ユウイチ、ジュン、マイの五人だった。
彼らの戦いはファグナス軍の士気を圧倒的に高めている。
「ユウイチ!時間がねえ!俺達が道を開く!一気に要塞までもぐりこめ!!」
そう言ってアカネと手をつなぐユキト。
「このまま真っ直ぐ進め!いいな!」
「信じてるよ!任せたぜ!!」
ユウイチ達は振り返りもせずさらにスピードを上げる。
「いくぞ・・アカネ」
「はい」
二人は声をそろえて詠唱する。
「「天の精霊カンナよ、風の精霊シルフよ我ら二人の声を聞け」」
「我は風の祝福を受け、天の加護を受けし者」
「私は紡ぐ。天よりの力を」
「我は放つ。荒ぶる風を」
「「今ここに!全てを断つ風の剣よ天より来たれ!!」
「「ギャラクシイ・サイクロン!!」」
耳を劈く轟音と共に竜巻が現れ真っ直ぐに道を開く。
モンスターたちを切り裂いて。
そしてそれだけにとどまらず味方を器用に避けつつ
モンスターだけを巻き込みながら周囲を暴れまわる。
ユウイチは一度も振り返らない。
ただ開かれた道を走っていく。
あそこにフォルンケスが・・ナユキがいる。
仲間たちの思いを。
この街に生きる人々の思いを。
そして何より自分がここを守りたいから。
ユウイチは要塞へと飛び込んだ。
「行ったな・・」
ふうとユキトはうなずいた。
「まだ・・お客様はいらしてますよ」
もちろんお客様とはモンスターたちのことだ。
「まだまだだ。ユウイチがフォルンケスを倒すまではへばれねえさ」
「その意気です」
アカネもユキトの隣りで敵を睨みつける。
「さてそれじゃあちらの大将さんとご対面と行くか」
ユキトは腰の細身剣を抜き敵陣へと飛び込む。
「ええお供します。・・・どこまでも」
そしてアカネもその後を追う。
西側の先制は他の戦いの場にも影響を与えた。
東側・・・・。
「ユキトさん達・・派手にやったな」
「そうですね〜。こちらも負けてられませんよ」
カズヤ、サユリはここからでも見える竜巻に感嘆をもらした。
「そうだな。行こう二人とも。どうやらこちらに若干戦力が集中しているようだ」
クゼは馬上から二人に声をかけた。
「皆!僕に続け!」
クゼは自分から真っ向にモンスターに立ち向かっていく。
彼が変わった、とわかる瞬間だった。
防衛ライン・・・。
「やるじゃない。ユキトも」
「・・ええ」
ルミ、ミナギは予想していたモンスターの部隊を相手にしながら
会話をしていた。
空からの急襲・・・。
当然予想できたことだった。
だからユキトは弓部隊、遠距離が可能な魔法部隊を城の防衛に当てたのである。
「にしてもまさかこれだけの数を出してくるとはね」
ルミの大剣がモンスターを真っ二つに割る。
「・・それだけ必死なのかもしれませんね」
抑揚のない声ながら詠唱を素早く済ませ必要最低限の魔法で
モンスターを撃破していくミナギ。
剣と魔のトップクラスの技術者たちに回りの人間は
ただ、唖然とするばかりであった。
「で、これは一体何の真似だ?」
サイトウは渡された金貨袋を睨みつけながらそう言った。
「報酬だよ?君のおかげでナユキを確保できたのだ。
当然ではないか」
だがサイトウはいらだったように返す。
「てめえが依頼したのは捕獲だろう!俺はあの女を捕獲できなかった。
だからこれはもらえないと言ってるんだ!」
「やれやれ・・君のおかげだといったろう?君がユウイチをひきつけたおかげで
こちらは体よく仕事が済んだのだ。礼を言うよ」
サイトウの腕は震えている。
自分を手ごま扱いにしたこと。
何より最初からお前など信用していないといわれたようで
サイトウはかなり頭に来ていた。
「黒風のサイトウをなめやがって・・」
奇妙な魔方陣の書かれた床に寝かされているナユキを見て
「この娘をどうする気だ」
「君に話す義理はない」
フォルンケスはそう言うと背を向け奥へと進む。
「それとも昔の使命が気になるか?【永遠】の守り手よ」
「・・!どうして・・それを」
「私も古代の遺物には知識が合ってね。そして・・特殊な武具にまつわる
一族も・・ね」
サイトウは笑った。
自分の愚かさに。
「何もかもお見通しだったってわけか・・」
「当然だ。言葉を変えよう。もう君に用は無い。見逃してやるから
とっとと失せろ」
カシャン!
「貴様を殺してからな!!」
サイトウはエターナルをフォルンケスめがけて突き出した!!
「要塞の中はまるで空っぽだな・・」
俺は回りの気配を探ったが辺りに生命反応は無い。
「攻め込まれることまで予想済みって感じがするな」
ジュンは要塞のこのあまりの手薄さにそう答えた。
「・・・奥のほうから邪悪な氣を感じる。フォルンケスはおそらくそこ・・」
マイが一つの通路を見ながらそう言った。
「よし!急ぐぜ!」
俺を先頭に俺たちはその通路を進み始めた。
先の見えぬその通路はまるで俺たちの行く末を案じているようだった。
続く
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